真宗大谷派の尼僧姉妹 DV夫から離れ“命にめざめた”瞬間

「蚊取り線香を使ったことある方いらっしゃいますか? 1回でも殺生したら“等活地獄”に落ちます! でもご安心ください。仏教には“功徳”というのがあって、よい行いをすれば、成仏できるんです」

 

登壇者のひとりである真言宗豊山派・東光寺(栃木県)副住職の市村直哉さん(40)が、軽快な口調でそう話すと、満席の会場からドッと笑いが起きた――。

 

6月2日、須磨寺(神戸市須磨区)で開催された「H1法話グランプリ」(以下、H1)。H1では宗派を超えて自薦、他薦で募った7組8人のお坊さんが参加し、持ち時間10分の中で、それぞれが趣向を凝らした法話を披露。それを聞いた観客と審査員が、1人3票ずつ投票。もっとも票が集まったお坊さんがグランプリとなる、まさに法話のコンテストだ。

 

大会当日、会場は満席。400枚のチケットは2日で売り切れたという。

 

市村さんが会場を笑いの渦に包んだかと思えば、最年少出場者の天台宗・正明寺(兵庫県)副住職の小林恵俊さん(28)は、自分の妻の話を披露。『妻は寺のPRのために、寺社内にぬいぐるみを置いて、その写真をインスタグラムにあげているんです』というゆる~いエピソードに、聞いているみなさんは思わずほっこり。

 

臨済宗妙心寺派・永正寺(愛知県)副住職の中村建岳さん(47)は、“苦いコーヒー”を人生にたとえ、仏教という“ミルク”を注ぐことでホッと一息つけるカフェラテになる、と仏教の意味を説いた。

 

クライマックスでは、「仏教はまるで~カフェラテ~」と、会場の参加者へコール&レスポンスをうながす場面も。

 

法話のイメージを覆すほどのライブ感に、会場は大盛り上がりだった。

 

紙芝居やプロジェクターなどを用い、出場者もさまざまな工夫をこらした今大会だったが、唯一の女性出場者の真宗大谷派・西照寺(石川県)僧侶「ひのう姉妹」はキーボード演奏に乗せて歌を披露した。

 

姉の日野直さん(46)は、絶対音感の持ち主。妹の史さん(43)は、学生時代からバンド活動をしているロッカーだ。この日は、命の尊さを説いた宗教歌『のんのさま 地球の子どもの子守唄』と『今、いのちに目覚めるとき』の2曲で教えを説いた。

 

あなたはあなたでよいのだと
気づいたときから生きられる
このかけがえのない私に
いのちが今、きらめく

 

そんな歌詞にこめられているのは、過酷な経験を乗り越えた彼女たちの過去。ひのう姉妹の2人は、その思いを本誌に明かしてくれた。

 

「私たち姉妹は、2人ともシングルマザーなんです。姉も私も、夫からDVやモラハラを受けて離婚しました」(史さん)

 

石川県西照寺の住職の娘として生まれた2人。当時の夫婦生活を、史さんが振り返る。

 

「夫婦で実家のお寺に入ったのですが、夫からは『おまえがいなくても、この寺は成り立つ。おまえは黙って飯さえつくっていればいい』と言われ、暴力をふるわれることもよくありました。私さえガマンしていれば、と自分を押し殺す日々でしたが、小学1年生の子どもですら夫に殴られ、壁まで吹っ飛んだのを見たとき、このままじゃいけない、って思ったんです」

 

「ママ、パパと解散(離婚)していいよ」と、言う子どものひと言に背中を押された史さんは、離婚を決意。2年間に及ぶ裁判ののち’13年に離婚が成立した。

 

「DVやモラハラを受け続けているなかで、自分なんかいなくてもいい存在だと思っていたんです。でも、私自身が自分を大切にし、輝いていなくては子どもを幸せにできないと気付きました」

 

彼女たちが披露した歌が説いているように、まさに“命に目覚めた”瞬間だった。

 

ひのう姉妹はトップバッターとしての出場だったが、バラード調で歌い上げられた『今、いのちに目覚めるとき』を、涙ぐんで聴き入る観客の姿も。会場全体は彼女たちからの愛に包まれた――。

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