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「テレビで加藤浩次さんの発言を聞いて『情報番組のキャスターなのに、ジャパンライフのことも知らなかったのか』と呆れましたよ。で、その後の志らくさんのツイートでしょ……」とため息をつくのは、全国紙の経済部記者だ。

 

2015年の総理大臣主催の「桜を見る会」に、マルチ商法を展開して破綻した「ジャパンライフ」の元会長が招待されていた問題。ジャパンライフ社は「安倍晋三内閣総理大臣から〇〇会長に『桜を見る会』の招待状が届きました」という文言とともに、招待状と受付票の写真を宣伝活動に使っていたことがわかっている。

 

実はこの受付票に印字された数字から、元会長が“安倍首相枠”で招待されたのではないかという疑惑を持たれているのだ。

 

「総理からの招待状」を見て信用した結果、ジャパンライフに出資し被害を受けた人の存在も指摘されており、野党は安倍首相の責任を厳しく追及している。だが、それに助け舟をだしたのが、「スッキリ」(日本テレビ)でメインキャスターを務める加藤浩次(50)だ。11月28日の放送でこう発言したのだ。

 

「マルチ商法の元会長が桜を見る会に参加したのは2015年ということですね。いまから4年前。このマルチ商法の家宅捜索が入ったのが今年の4月。(中略)時系列を整理して言わないと、世の中に違った印象を与える部分が野党側にあると思う」

 

確かに特定商取引法違反の疑い、元会長宅などジャパンライフの関係先約30カ所の家宅捜索が行われたのは今年の4月25日のことだ。よって2015年の時点では、ジャパンライフの違法性は認識できなかったというのが加藤の理論だ。これに同調したのが、『グッとラック!』(TBS系)でメインキャスターを務める立川志らく(56)だ。

 

一般のツイッターユーザーが番組の映像とともに《スッキリ加藤浩次さん『ジャパンライフの元会長を呼んだのは、4年前の2015年。家宅捜索が入ったのは、今年の4月。招待した4年前の時点じゃ、分からんでしょ?』》と加藤の発言がまとめられたツイートを、志らくは自分のツイッター上で紹介。そのうえで、こんなことをツイートしたのだ。

 

《行政指導を受けた会社の人間を反社と言っていると混同している人がいる。勿論反社もまだ確定はしていない。行政指導を受けている大企業は沢山あるし後に家宅捜査が入った事でそれを一緒にして攻撃する野党は印象操作っぽい。野党のパフォーマンスも与党のガキ以下の答弁も酷い。つまりどちらも情けない》

 

2014年の9月と10月に、ジャパンライフは消費者庁から行政指導を受けている。どうやら志らくは“元会長が桜を見る会に招かれた2015年の時点では行政指導が行われていたに過ぎないのだし、家宅捜索が入ったのは会の後だから、野党の攻撃は印象操作だ”という趣旨のことを言いたいようだ。

 

だが、これに多くの報道関係者が呆れかえっている。じつはこのジャパンライフと元会長がこれまで多くの問題を引き起こしてきたことは、周知の事実なのだ。

 

すでに80歳近い年齢の元会長は、1970年代にはジャパンライフの前身となる企業を経営していた。健康食品や洗剤を取り扱っていたが、その販売方法がマルチ商法ではないかとの批判が高まり、1975年に元会長は参考人として国会に招致されている。同年にジャパンライフを設立。羽毛ふとんやマットレスを主力商品に変えたが、販売方法はさほど変わらなかったようだ。

 

1980年代には規制法の網をかいくぐった“マルチまがい商法”として批判を受け、ふたたび国会で取り上げられるように。ちなみに1983年、元会長は法人税法違反で告発も受けている。その後、ジャパンライフは韓国にも進出。1990年初頭に韓国内で大きな社会問題になり、同国でマルチ商法の規制法が制定されるきっかけにもなった。

 

長らく“マルチまがい商法”の代名詞として知られていたジャパンライフ。たとえば、2002年12月12日の「朝日新聞」東京夕刊。マルチまがい商法について解説する記事で、「健康寝具販売会社『ジャパンライフ』の商法はその代表例です」と端的に名指しされている。

 

当然、2015年当時もこのような経緯は周知の事実だったのだが、野党の指摘が正しければ“安倍首相枠”で元会長は「桜を見る会」に招待されていたのだ。

 

多くの批判にさらされながらもジャパンライフが法のグレイゾーンで長らく生きながらえてきたのは、国会議員への多額の政治献金や、消費者庁を含む官僚の天下りを受け入れてきたためだと指摘されている。

 

2019年、多くの人から資金を集めたまま、同社は破産。被害弁護団によると、被害者は7000人、被害総額は1800億円。被害者には、高齢者が多いという。前出の記者はこう憤る。

 

「加藤さんや志らくさんは、ジャパンライフが問題視されるようになったのが、あたかも昨日今日のことのように言っていますけど……。新聞を読む習慣さえあれば、ジャパンライフの名はどこかで耳にしたことがあったはずです。ましてや、情報番組のキャスターを務める人でしょ。知らないこと自体が問題ですよ。スタッフも、これらの歴史を伝えなかったのでしょうか。あたかも近年になって初めてジャパンライフが問題視されるようになったと言うことこそ、悪質な印象操作と言わざるを得ません」

 

情報番組のキャスターになってまだ2カ月ほどの立川志らくはともかく、加藤浩次は2006年からからキャスター務める大ベテラン。もう少し、世の報道に敏感になってほしい。

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