(写真:読者提供) 画像を見る

2月2日夕方、羽田空港の新ルートで、実際の旅客機を使った初の試験飛行が行われた。約1時間40分にわたり、およそ2分に1機のペースで、東京都心の上空を計61機の飛行機が飛んだ。数値上よりも近く見えるその機影に、多くの都民が騒然となったが、じつは「女性自身」は’18年1月30日号で、この問題について警鐘を発していた。

 

国は’20年の東京オリンピック・パラリンピック開催に伴い、国際線の増便を計画。そこで羽田空港を離着陸する便の新たな飛行ルートの導入を決めた。そのうち2本の着陸用飛行ルートが、新宿、渋谷、目黒、白金高輪、品川といった都心部を低空飛行で通過する。

 

「計画では都心部上空を着陸体制で、300~900メートルの低空飛行で通過します。このルートの飛行時間帯は15~19時の4時間。1時間あたり44回通過するので、約2分に1回の割合で都心上空を通ることになります。次から次へと継続して騒音が続くわけです。通過地域の住民にとって、これは精神的に大きなダメージを受けると思います」

 

こう語るのは、今回の新飛行ルート計画に反対する「みなとの空を守る会」共同代表・増間碌郎さん。国交省の資料によると、新宿から大井町にかけての飛行ルート直下およびその周辺の地上での騒音レベルは約70~80デシベル。幹線道路際、騒がしい街頭の騒音レベルだ。80デシベル以上だと、一般的には“地下鉄の車内”“ボウリング場”と同等のうるささ。隣の人の会話は聞き取れないレベルだといわれている。

 

都心部に多いタワーマンションの場合、より飛行機に近くなるので、騒音もそれだけ大きくなる。「騒音の影響で不動産価格が下落する可能性がある」と語るのは、不動産コンサルタントの長嶋修さんだ。

 

「とくにタワーマンションは、眺望がいいという理由で、単純に上に行けば行くほど不動産価値が高くなる。ところが、飛行機の騒音となると、上に行けば行くほどうるさくなる。2階と30階では音の大きさが全然違ってきます。1階あたりは3メートルくらいだとすると、30階は90メートルになる。真上を飛んでいた場合、30階の住人は飛行機との距離が約100メートル近くなるんです」

 

では、具体的に不動産価値はどれくらい下がるのか? ’94年、米国コンサル会社が、ロサンゼルス空港ができたときに連邦航空局に提出した騒音と不動産価値との関係を調べた資料から、長嶋さんが下落率を算出した。

 

「騒音に差がある2地点の不動産価格を比較した調査で、静かな地点のほうが不動産価値は18.6パーセント高く、1デシベルあたりで換算すると、1.33パーセント高いことがわかりました」

 

環境省の環境基準は、55デシベル以下。長嶋さんはこれを超える分については、1デシベルあたり1.33パーセント下落すると仮定してシミュレーションをした。

 

「白金、代官山あたりのふだんの騒音レベルは環境基準程度ですが、飛行機の通過によって、最大で74デシベルになると予想されます。環境基準を超えた分は19デシベルなので、これに1.33パーセントをかけると約25パーセントになります。つまり、1億円のマンションであれば、下落率は25パーセント。7,500万円になる計算です」

 

国交省はこの問題について、「音などの感じ方については個人差がある。航空機の飛行経路と不動産価値の変動との間に直接的な因果関係を見出すことは難しい」と回答した。仮に不動産価格が下落しても、住民たちが泣き寝入りしないといけないことは間違いなさそうだ。

【関連画像】

関連カテゴリー: