女性であるというだけで愛子さまが将来の天皇になれないのは、女性差別ではないのかーー。国民的議題である皇位継承問題。『部長、その恋愛はセクハラです!』(集英社新書)などの著書がある、社会学・ジェンダー研究者の牟田和恵さん(大阪大学大学院人間科学研究科教授)に、見解を聞いた。
昨年マスコミ各社が行った世論調査では、女性天皇について8割前後が賛成意見でした。私も、天皇陛下の長子である愛子内親王が次の天皇になられるのが当然だと考えます。現在の皇室典範は男女平等ではなく、改正するべきです。
日本国憲法には、法の下の平等が記され、男女平等が定められています。しかし皇室では、天皇という皇位を継承できるのは、男系の男子に限られています。
「一般社会と皇室は別ではないか」と思われるかもしれません。しかし、皇室典範における女性差別は、日本社会の女性差別を反映しているのです。
たとえば、いまだにお葬式では「喪主は男性でないと」といった意識が根強いです。また、夫婦の姓も、男性の姓に合わせることがほとんどです。こういった女性差別の根本には、家長を男性に限るという「家父長制」があります。個人の自由より「家」を第一とする発想が、いまだに日本社会に根強く残っている証拠なのです。
「家制度」は、敗戦による憲法改正で廃止されました。しかし、日本という国の象徴である皇室には、男子しか皇位を継承できないというルールが残ってしまったのです。
皇室の女性差別が見直されなければ、日本社会における女性の生きづらさも本質的には変わらないのではないでしょうか。
‘85年に女性差別撤廃条約が締結されたこともあり、ヨーロッパのほとんどの王室で、性別にかかわらず第一子が王位を継承するようになっています。日本も天皇の第一子が皇位を継承するように皇室典範の改正を急ぐべきでしょう。
世界経済フォーラムが各国の男女平等の度合いを調査した「ジェンダー・ギャップ指数」の’19年版で、日本は153カ国中121位で、過去最低でした。政治や経済などさまざまな分野で、いまだに女性は低い立場に置かれています。それは、皇室のあり方と決して無関係ではないと思います。
愛子内親王は天皇皇后両陛下のもとですこやかに成長されているようです。将来、即位されれば、天皇として立派に務めを果たされることでしょう。
「女性だからできないこと」は、社会からなくしていくべきです。皇位継承についても、同じだと思います。
「女性自身」2020年2月11日号 掲載