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「新型コロナウイルスの感染拡大によって、海外からの観光客は大幅に減少しています。そのうえ、中国経済の冷え込みが深刻なため、中国から原料が調達できなかったり、中国向けの輸出が激減したりと、日本の企業にも大きな影響が出ています。このままだと、日本経済は壊滅的なダメージを受けてしまうでしょう」

 

そう語るのは、京都大学大学院の藤井聡教授。

 

政府は2月26日に“新型コロナウイルス感染拡大を防ぐためのイベントの開催自粛”を要請。各地でコンサートやスポーツイベントの中止が相次いでいる。

 

あらゆるイベントが自粛となり経済活動が停滞するなか、さらなる“悪夢”が忍び寄っている。新型コロナの影響で、今夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催を中止すべきという声が増えているのだ。

 

国際オリンピック委員会(以下、IOC)の重鎮、ディック・パウンド氏ですら「(3カ月あとも事態が終息していなければ)おそらく東京五輪の中止を検討するだろう」と、中止の可能性に言及したのだ。

 

橋本聖子五輪相はこの発言を「IOCとしての公式の見解ではない」とし、開催に向けた準備を進める考えを示した。

 

「ですが、五輪をめぐるすべての最終決定権はIOCにあります。その根拠はIOCが’13年9月に、東京都および日本オリンピック委員会と結んだ“開催都市契約”です。この契約では、大会の延期や中止などの決定はIOCが単独で判断できると規定されているのです」(スポーツ紙記者)

 

現実味を帯び始めた東京五輪の中止――。スポーツライターの小林信也さんは、中止をいっさい検討しようとしない政府や組織委員会の姿勢を疑問視する。

 

「もちろん、すぐに中止にする必要はありません。しかし、世界中で人々の健康が損なわれているなか、開催中止の選択肢を無視するのはおかしな話です。’16年のリオ五輪では、ブラジルでのジカ熱の流行を理由に出場しなかった選手もいました。今回のコロナウイルスの感染拡大は、4年前のジカ熱の流行よりもはるかに深刻な事態です。そもそも選手や観客が、新型コロナウイルスの危機が迫っている東京に来てくれないことも考えられる状況です。このようななかで無理やり開催しても、国内外の選手が万全の態勢で競技に臨めない可能性が高いでしょう」

 

終息への糸口さえ見えないなか、迫るオリンピックシーズン。東京五輪が中止になった場合、はたして日本経済にとってどれほどの損失になる見込みなのだろうか? 第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣さんはこう語る。

 

「仮に五輪が予定どおり開催されたとしても、新型コロナウイルスの影響によって日本経済には2.9兆円の損失があると分析しています。これに開催中止が重なると、損失は2.2兆円増えて、5.1兆円になります。さらに、1年を通してコロナの悪影響が続くとなれば、10兆円もの損失となると試算しています。損失の内訳としては、実は外国人旅行客による“インバウンド消費”の減少よりも、日本人のエンタメや飲食、旅行などの、消費の自粛が大きく影響します。インバウンドは年間で4.8兆円なのに対し、個人消費は年間240兆円ですから、国内の消費が落ち込むことが大きな問題です」

 

「女性自身」2020年3月17日号 掲載

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