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新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、3月24日に国際オリンピック委員会(IOC)が、安倍晋三首相とバッハ同委員会会長との電話会談を受けて、「1年程度の延期」を承認した。

 

「124年の近代五輪の歴史上、戦争により3回は『中止』されましたが、『延期』は史上初。それは、1894年に世界大戦を回避するため『スポーツで世界平和を構築する』という精神が打ち出されて以来、オリンピアードという『4年に1度のサイクル』が遵守されてきたからです」

 

そう解説するのは、かつて日本オリンピック委員会(JOC)参事を務めたスポーツコンサルタントの春日良一さん。

 

代表選考やチケットの取り扱いーー。延期によってどのような影響を受けるのだろうか。春日さんが解説してくれた。

 

【1】選手の「再選考」はあり得る?

 

東京マラソンで日本記録をマークし、今大会出場の権利を勝ち取った大迫傑選手らをはじめ、内定選手は出場選手全体の57%。残り43%は今後、選考会などを経て選出されることになる。

 

「内定した選手に関しては、その権利ははく奪されることは考えにくい。なぜなら、’21年に延期したとしても『TOKYO 2020』の名を冠す以上、’20年の大会のために選出された選手で行われるべきだからです」(春日さん・以下同)

 

しかし、男女計14階級のうち13階級の出場選手が内定している柔道は、再選考する可能性を全日本柔道連盟が示唆している。

 

「金メダル獲得だけを追求し、すでに内定している選手の権利をはく奪してしまうことになれば、オリンピックの精神に“反している”ともいえますが……」

 

【2】チケットはそのまま使えるの?

 

「苦労して抽選に申し込んだのに、もうこれは紙くずになるのかしら?」と、チケットに当選した50代主婦は不安をもらす。

 

この問題について、組織委員会に本誌が問い合わせたところ、「チケットの取り扱いに関しては今後検討させていただいたうえで、決まり次第ご案内します」(3月26日時点)と回答。春日さんは次のように見立てる。

 

「チケットは原則、購入したものをそのまま使えるように組織委員会が調整すべきです。ただし、きっかり1年後、’21年7月24日から開催されると仮定すると、曜日は1つ後ろ倒しになりますが……」

 

たとえば、’20年8月2日(日曜日)に行われる予定だった競技は、月曜日に開催される。“平日に見られないから休日のチケットを買ったのに”という人も現れるはず。

 

「新日程で都合がつかなくなってしまう人のため、組織委員会が措置を取るでしょう。公式サイト上で、定価のまま観戦希望者と取引できるような仕組みができるのではないでしょうか」

 

【3】1年後でも、同じ会場で開催されるの?

 

「現段階では、“ほとんど”の会場が『使用可能』で調整できるとみています。1年後に別のイベントの開催予定している会場については、変更される可能性も否定できませんが、同じ会場で開催できるよう、組織委員会が交渉を続けるでしょう」

 

【4】日本にやってきた「聖火」はどうなるの?

 

3月20日、ギリシャで採火された聖火が日本に上陸。東日本大震災の被災県を「復興の火」として巡回したが、当分は福島県で保管されることになった。

 

「聖火は、もともと『休戦を告げる平和の使者』の役割を持つもの。新型コロナウイルスを制し、平和をもたらした証しとして東京五輪が開催されるのであれば、来る開会式まで、その火は日本国内でともし続けるのが五輪の精神に基づいた考えといえます」

 

「女性自身」2020年4月14日号 掲載

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