日本で緊急事態宣言が発令されてから1週間。しかし新型コロナウイルスの感染者数が減少する兆しは未だ見えず、医療体制が限界を迎える“医療崩壊”の懸念も日に日に高まっている。これにより本来だったら病気が治ったり見つかったりする手術や検査が手薄に。慢性疾患をかかえる患者にとっては厳しい現状が続くというのだ――。医療従事者の蓄積した疲労やストレスは頂点に達しているようだ。
「医療現場でとくに疲弊しているのは指定病院など大病院の入院施設スタッフです。新型コロナ禍の収束が見えないなか、次から次に新しい患者が運ばれてきて対応せざるをえないという声があるのです」(東京都医師会・角田副会長)
その現場では、つねに感染というリスクを抱えている。順天堂大学病院・総合診療科の内藤俊夫教授は言う。
「医師や看護師はじめ医療スタッフにはかなりの緊張感があり、それがストレスになっています。いちばん怖いのは、終わりが見えないことです。いつまでこの状態が続くのかわからない状態は、ストレスが増してしまいます。さらに若手の医師には『新型コロナウイルスを家に持ち帰りたくない』と言って宿舎に泊まり込んでいる者もいます。ゆっくり休むこともできずストレスに加えて疲労が蓄積してしまうことが気がかりです」
医療従事者たちの苦悩を目の当たりにしている日本医療労働組合連合会・副委員長の三浦宣子さんは強く訴える。
「自分たちが感染するのではないか、家族にうつすのではないかというリスクを抱えながら、コロナウイルスと向き合っている看護師のなかには『子供の保育所から通園を拒否される』『帰宅してもばい菌扱いされ、精神的にも休息できる場がない』などの悩みも……」
それに加えて、マンパワー不足も深刻だという。
「『人員が足りないなかで、重症化した患者を見ることには不安を感じている』と訴える看護師がいました。人工呼吸器でも助けられない患者に使うECMO(人工心肺装置)は、集中治療室での経験がある看護師しか扱えませんから」
患者を救う医療装置はあっても、それを扱える医療従事者が足りない事態が間近に迫っているのだ。都内の感染症指定病院の内科医が語る。
「致死率2%の感染症を診察しても、1日数百円の防疫手当だけ。それでも仕事を継続しているのは、高度な職業倫理によって。しかし、それも時間の問題。いつ彼らが現場を離れてもおかしくない状況です。このままでは医療崩壊をくいとめられません」
「女性自身」2020年4月28日号 掲載