広島県尾道市にある千光寺山ロープウェイの公式Twitterアカウントが9月19日、「『このご時世なのに人が多い』と怒鳴った人がいた」と報告した。コロナ禍で広がるカスハラ被害。ネットでは怒りの声が相次いでいる。
同アカウントは同日、《誘導している誘導員に「このご時世なのに人が多い」と怒鳴った人がいたようです。誘導員に怒鳴ったら人が少なくなるとお思いなんでしょうか》とツイート。続けて、こうつづった。
《怒鳴られた誘導員は、涙声で報告してくれました。一生懸命に、お客様を笑顔で迎えてくれる子です》
《すみません、少し感情的になってしまいました。声を震わせて報告をしてくれた誘導員の子は理不尽で怖い想いをしたと思います。怒らずとも伝えられることはあるはずです》
一連のツイートは反響を呼び、なかには3.7万もの“いいね”を記録するものも。また《怒鳴るほど密が気になるのなら、その場所に行かなければ良いと思う》《こんな理不尽な文句言う奴は相手が絶対に反撃してこれないのを分かってて言ってる》《俺は行く、みんなは来るな、では理不尽すぎますね》との声がネットで上がっている。
こうした利用客による理不尽なクレームはカスタマーハラスメント、通称“カスハラ”と呼ばれている。コロナ禍で感染の不安が拭えないなか、業種を問わず広がっているようだ。
「宅配便の配達員が除菌スプレーをかけられたり、ドラッグストアの店員が“マスク品切れ”に納得いかない人から怒鳴られるといったケースも報告されています。雇い主も従業員が心無い言動の被害に遭わないよう、メッセージを発信するなどして対策をとっています」(全国紙記者)
本誌20年5月5日号でも、カスハラについて特集している。日本全国のスーパーや関連産業など計1,250社で組織する「全国スーパーマーケット協会」で事務局次長を務める村尾芳久氏は、カスハラの加害者はスーパーマーケットに「在宅ストレスを吐き出しに来る」とコメント。さらに、こんなカスハラを明かしていた。
「たとえば、レジで商品をカゴからカゴに移す作業で、卵など割れやすいものはいちばん上に載せないといけないので一度、レジ台に置いたりしますよね。すると『レジ台に置くな!』と怒鳴られたり。マスクしている店員に『マスクが売ってないからそれを売れよ!』と怒られることもあるんです」
村尾氏は「現場は疲弊しています。感染者が出た店は特にです」と語り、そしてこう呼びかけていた。
「言いがかりのようなクレームはやめてほしいです。現場の人たちに代わって、私が言います。働き続けてくれる人たちに、どうか感謝の気持ちを持ってください」
コロナ禍では医療従事者を筆頭に、ライフラインを維持するために働き続ける“エッセンシャルワーカー”への差別がたびたび問題視されている。どのような状況にあっても、働き手への感謝の念を忘れてはならない。