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10月からビール類などにかかる酒税が改定された。酒税(350ミリリットル換算)は、ビールが77円から70円になり、7円の引き下げ。反対に、新ジャンル(第三のビール)は28円から37.8円と約10円の引き上げ。発泡酒は46.99円のまま、今回は据え置きとなっている。そんな10月からの新・酒税法について、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。

 

■税は「取りやすいところから取られる」

 

今回の酒税改革は、3段階で進められます。次は3年後の’23年10月、最後は6年後の’26年10月の予定で、最終的に、ビール、発泡酒、新ジャンルにかかる酒税が54.25%に統一されます。

 

ビール類の出荷量は’18年、ビールが約1億9,000万ケースで、新ジャンルは約1億5,000万ケース。’19年以降の出荷量は非公開ですが、新ジャンルがビールを猛追しているといわれます。

 

さらに今年はコロナ禍で、飲食店での需要が多いビールは出荷量を落とし、反対に、家飲みが増えた結果、新ジャンルは出荷量を増やしていることが予想されます。

 

仮に、両者の出荷量が同じだとすると、酒税は7円の引き下げと10円の引き上げで、国の税収は増加。だとしたら、増税ですよね。

 

これまでも、酒税はビール類の売れ行きに多大な影響を与えてきました。発泡酒が’94年に登場し人気が出ると、’96年と’03年に酒税を引き上げ。’04年に新ジャンルが登場するや、’06年にまた酒税改定。そして、今回、新ジャンルも発泡酒もビール並みの酒税にする。まさに“税金は取りやすいところから取る”の典型です。

 

酒税以外にも、取りやすいところに新税・増税が乱発されています。日本を出国時に1,000円徴収される「出国税」は’19年に導入され、「森林環境税」は’24年度から住民税に1,000円上乗せされます。また、たばこ税は3段階引き上げの2回目が、10月から実施されています。

 

消費税をはじめ、これらの増税は、私たちの家計をじりじりと苦しめています。そもそも、ビール1本約200円のおよそ3分の1が酒税で、さらに消費税も私たちは負担しているのです。

 

いっぽう、これら税金の使い道は、国民からは見えづらい。元総理大臣の葬儀より、コロナ禍で倒産目前の会社を救うことに、もっと税金を使えないのでしょうか。国には税収をどう増やすかではなく、どううまく使うかに、知恵を絞ってほしいものです。

 

「女性自身」2020年10月20日号 掲載

経済ジャーナリスト

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