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「孫にお金を使っているうち、老後資金がいつの間にか消える『孫破産』という悲劇が増えていることをご存じでしょうか?」

 

こう話すのは、老後資金の問題にくわしいファイナンシャルプランナーの長尾義弘さん。孫で破産する? にわかに信じられないが、具体的な例をもとに、長尾さんに解説してもらおう。

 

■孫のために住宅支援贈与をしたばかりに、自宅売却!

 

50代のAさん夫婦には2人の息子がいた。ともに独立、結婚し、孫も誕生。Aさん夫婦は毎月、どちらかの孫と週末を過ごす幸せな日々を送っていた。

 

「先に長男が住宅の購入のため、お金の援助を求めてきました。いまは住宅取得資金贈与の特例で500万円までは非課税になります。長男の嫁の両親は、これを利用して500万円支援してくれるというのです。相手の親に対する見えもあり、Aさん夫婦も老後資金から500万円を長男夫婦に贈与せざるをえませんでした」

 

すると、続けて次男から「実家の近所に住むから、これからは毎日、孫と会えるよ」と、住宅購入支援の話がくる。長男に500万円贈与したので、当然、次男からも同じ金額を期待され、老後を万全にと貯めていた虎の子の1,000万円が泡のように消えた。貯金が底をついたその矢先、新型コロナ不況が直撃。Aさんの仕事先が倒産。自宅のローンが払えなくなってしまったという。

 

「長男、次男も自分たちの生活にきゅうきゅうとしていて、とても親を助けられる状況にはありません。やむなく、Aさんは自宅を手放すことになったのです」

 

これが典型的な「孫破産」。新型コロナがなければこうした悲劇は起きなかったかもしれないが、そもそも孫かわいさから、老後資金を使ってしまわなければ、自宅を手放すこともなかったのだ。

 

「アットホーム『住宅購入時の“親の資金贈与”実態調査』によると、親からの平均贈与額は平均564万円。親が同じ地域に住む場合は、さらに増えて平均642万円です。贈与額500〜600万円が全体の22.9%で、1,000〜1,500万円も13.0%にのぼります。近くに家を建てると、支援額が増えるのは、これは孫がそばに住んでくれるということや自分の介護を頼みやすいからということの表れでしょう。決して、Aさんの事例はひとごとではありません」

 

孫と一緒にいるのは、生きがいにもつながる大切なこと。しかし生活が苦しくなるまで老後資金をつぎこむのは本末転倒。すべてはほどほどが無難のようだ。

 

「女性自身」2020年10月27日号 掲載

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