全国の介護施設でクラスターが発生。沖縄県の施設には自衛隊が投入された(写真提供:防衛省統合幕僚監部) 画像を見る

「介護報酬が改定されるので、A課長に地元に来ていただいてセミナーを開いてもらおうとしたんです。でも、コロナを理由に、断られてしまって……。そしたら今回の報道でしょ。われわれのためにセミナーはできないけど、飲み会はできるんだと驚きましたよ」

 

そう語るのは、西日本の地方都市で老人ホームなどを経営する社会福祉法人の理事長だ。厚生労働省の職員23人が宴会を開いていた問題が全国の介護事業者に大きな衝撃を与えている。じつは宴会を行った職員が所属する老健局は高齢者医療や福祉などを担当する介護事業の所管部署だ。

 

宴会を主催したA課長は、介護報酬に関するセミナーへの出席を介護事業者から求められたが、新型コロナウイルスが感染拡大していることを理由に断っていた。にもかかわらず、宴会には興じていたのだから、呆れるほかない。

 

訪問介護業を行っている「でぃぐにてぃ」(東京都)代表の吉田真一さんはこう話す。

 

「この前、5年間働いてくれた職員が退職したんですが、送別会もしていません。昨年9月、経営陣のひとりがコロナに感染したこともあって、慎重にならざるを得ません。利用者は高齢で、持病をお持ちの方も多い。命にかかわる問題なので、現場では、日々、我慢の連続です」

 

ウイルスへの抵抗力が弱い高齢者が集う介護施設は、しばしばクラスター(集団感染)の舞台となってきた。4月1日、職員と入居者47名のクラスターが起きた神奈川県川崎市の老人ホームで、80代男性が亡くなったことが発表された。また、2日には埼玉県川口市の老人ホームでスタッフ3名と入所者18名のクラスターが起きたことが明らかに。前出の理事長はこう語る。

 

「結局、現場には我慢しろとか対策しろとかいうだけで、感染対策はほとんど丸投げ。いざとなっても入院先が見つからず、施設内での隔離を求められることも多い。宴会していた職員たちには現場の窮状をぜひ見に来てほしいですね。飲み会をする時間があるなら、できるはずじゃないですか」

 

「女性自身」2021年4月20日号 掲載

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