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三重県の自民党所属の小林貴虎県議(47)による、同性カップルの個人情報晒しが波紋を広げ続けている。

 

小林県議は3月7日、Twitterに同性カップルについて《婚姻と同等の権利をよこせと言うことなら、同等の責任を果たさなければその資格はないでしょう》などと投稿。それに対し、同性カップルが公開質問状を送付したところ、小林県議は自身のブログで公開質問状や個人情報などを3月30日に無断で公開した。

 

各報道によると、同性カップルは、その翌日の31日に小林県議と面会し、削除を要請したものの、小林県議は、「公開質問状を取り下げたら、こちらも削除する」と拒否したという。しかし一連の騒動が5日に報道されると、小林県議は同日午後「私の周辺の方々に迷惑がかかっている」などとして画像を削除していた。

 

小林県議は個人情報を無断公開したことについて、以下のように弁解している。

 

《ご自身が性的少数者であるということを公言されて、今のパートナーシップ制度を使って、地元の新聞などに取り上げられて、パートナーシップ制度の導入の要望に来る人たちなんです。この方たちは、自分の性的指向を公表して講演会活動をしている人たちです。

 

私としては、死ぬまでクローゼットで、誰にも自分の性的指向を公表しない方の住所や、(2人が)性的少数者ということを公表したわけではなく、そもそも(2人は)公にLGBT活動している人たちです。初めから公開質問状ということですから、私は公開させていただいたつもりです》(『AERA dot.』4月5日配信記事)

 

“性的志向を公にしているのだから公開は問題ない”という持論を展開した小林県議。しかし、三重県の岡本栄伊賀市長は6日に「明らかに人権侵害だ。許されない」と糾弾するなど、批判の声は強まるばかりだ。

 

実際、小林県議の行為は法的にどのような問題があるのか、神田お茶の水法律事務所の上谷さくら弁護士に聞いた。

 

「住所は個人情報の中でも大事なものです。本人の承諾なく載せることはプライバシーの侵害に当たります。質問者の2人は性的指向を開示しているのでアウティングに当たらないという主張もありますが、そもそも性的指向に関係せずとも、住所を世界中に晒すというのは重大なプライバシー侵害です。

 

プライバシー侵害は法律で直接規定されているものではなく、憲法13条の幸福追求権のひとつとして保障されると考えられています。今回の小林議員の行為は、民法上の不法行為に当たる可能性があります。民事で裁判を起こした場合、慰謝料として認められる金額は大きくなくても、『プライバシーの侵害に当たる』と認定される可能性が高いでしょう」

 

また、プライバシーの侵害以外にも問題があると、上谷弁護士は指摘する。

 

「どういう立場の人間であるか、身分を明かして議員に質問するというのは大事なことです。しかし、だからといって受け取った側がその情報を自由にしていいということではありません。質問者の個人情報を無断で晒す行為は、一市民である質問者に対して権力者が報復し、脅しているように感じるので、市民が萎縮して、匿名でなければ質問できなくなってしまいます。その観点からも、小林議員の行為は正当化できません。

 

今回の場合、すでに掲載を取り下げているので刑事罰に問われることはないと思いますが、同様の行為は、事情によっては刑法上の名誉毀損や脅迫に当たるケースもありえます」

 

掲載は取りやめたものの、いまだ反省している様子のない小林県議。県議でありながらの“憲法違反”にどう向き合うつもりなのだろうかーー。

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