話の後半は、理解不能。でも、そのままを受け止めればいい。何度も繰り返した言葉は、「楽しい」だった。
「ラジオ? 楽しいよ。私ね、なんでも参加するの。散歩も楽しい」
権頭さんは言う。
「あめちゃんずの3人は、ラジオに出るようになって、とても前向きになった気がします。お話も上手になった。聞いている人を意識するようになったからですね。
『何が何だかわからない』と言っていた人が、『何か面白いこと言わな』『笑ってくれたらいいな』と、考えているのが伝わってくる。進歩してる。すごいことです」
ラジオの生放送を終えた後、近所の公園を出演者5人で散歩した。
「ここはええね。明るくて、桜もきれいで」
少し前に足首をひねった酒井さんは車いすだが、車いすを押す権頭さんに盛んに話しかけている。中村さんと天神さんは、小島さんに手を引かれ、のんびり歩いた。
「あめちゃんずのラジオを通して、認知症になっても、一緒に会話を楽しめるんだよということをもっと皆さんに知ってほしいですね。認知症=不幸せと思ってほしくないんです。認知症を患ったからといって、何もできないわけではない。まして怖い人でも、迷惑かけるばかりの厄介者でもない。一緒にいるだけで、ほっこりした気持ちにさせてもらえる。癒されるし、優しい気持ちにさせてもえる。そのゆったりとした優しい時間を1人でも多くの方に味わっていただいて、正しい認知症の姿を知ってほしいと思っています」
と、権頭さん。
「あめちゃんずの皆さんには100歳を目指していただきたいですね。3人で、300歳で、ラジオでおしゃべり。そのときどんな会話が飛び出すか。楽しみでしょうがないです」
そろって眩しそうに満開の桜を見上げるあめちゃんず。3つの笑顔が明るい春の日に輝いていた――。
「女性自身」2021年5月4日号 掲載