■なぜこんなにも表情が豊かなの?
大きく目を見開いたり、眉毛をあげたり、“楽しそう”といわれていた通訳者の豊かな表情や仕草。しかし、これには楽しく見える以上の意味があるという。
「“表情の豊かさ”と言われているものは、表情ではなく、手話の文法の一種になります。手話は、手の動きだけでなく、眉や頬、口、顎の動き等も含めて表現する言語なのです」
一般的に、手で表現されると思われている手話だが、実は表情や体の動きも非常に重要。同じ手話でも表情や顔の動かし方によって、問いかけや誘い、否定など意味が変わる場合もあるのだ。
■どうして画面を眺めているの?
パフォーマンスの最中など通訳するものがないときには、モニターに映る閉会式の様子を眺めていた通訳者の方々。決して手持ち無沙汰だから眺めていたわけではないようだ。
「ろう者同士が会話をする際には、視線を合わせて話す習慣があります。通訳者が常に正面を向いていると、通訳する言葉がない間にも、視聴者(ろう者)の視点が通訳者に集まってしまう可能性がありました。そこで、閉会式の映像を見てもらう合図として、通訳者に映像を眺めてもらっていたのです」
出演された通訳者の皆さんは「無事終わってよかった」と語っているという。
今回のような手話付き放送が、特別ではなく当たり前のものとして受け止められる世の中。それこそが、東京五輪の掲げる「多様性と調和」に満ちた世の中なのかもしれない。
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