「『ふちゅうハウス』の11年の歴史のなかで初めてのクラウドファウンディング(CF)を行った背景には、コロナ禍がありました。
コロナ以前と比べて滞在家族数が減ったものの、収束の時期を待つこともできず、またここの病院でないと治療ができないために、遠方からいらっしゃる患者とそのご家族もおられます。
ハウスはより安全な環境を提供できる家として維持することが望まれますが、運営のための寄付を呼びかけるバザーなどもまったく出来ない状況となったのです」
東京都府中市にある『ドナルド・マクドナルド・ハウス ふちゅう』のハウスマネージャーの市辺貴代さんが語る。
小児がんなどの病気と闘う子どもに付き添う家族のための滞在施設であるドナルド・マクドナルド・ハウス。日本では01年に世田谷区に設立されて以降、札幌や仙台、福岡などに11施設があり、ふちゅうハウスは10年3月に7番目の施設として、小児がんの拠点病院である東京都立小児総合医療センターの敷地内に開設された。
全12室を1日1,000円で利用でき、キッチンやランドリーなども整ったハウスは、治療や手術を受ける患者(20歳未満)や家族にとって、そのコンセプトの通り、“わが家のようにくつろげる第二の家”だ。
「北海道から沖縄まで地方からの患者さんご家族にとって、都内での治療の際は交通費や宿泊費の負担が大きいもの。ハウスのない時代には、ご両親が車中泊して凌ぐという方もいらっしゃいました。
また、ここは高い医療の治療技術を求めて、海外からの患者さん家族も多いんです」
語るのは、サブハウスマネージャーの渡井京子さん。
1日1,000円の破格の宿泊費と24時間の利用を実現しているのが、ボランティアの存在だ。
「スタッフは3名のみで、あとは高校生から80代まで157名のボランティアの方により支えられています。
チェックインでは、大きな手術を前に緊張されていたお母さんが、このハウスに滞在している間に無事にお子さんの治療を終え、『ようやく退院できます』という笑顔の報告を受けるときが、私たちのなによりの喜びです。
しかし、多くの人の思いや尽力によって患者さんのご家族にご利用いただいていましたが、コロナ禍の影響により減少し、またチャリティイベントなどもまったく実施できなくなりました」
年間2,000万円という施設の運営費は、患者家族の滞在費に加え、支援企業や個人の寄付、バザーなどのチャリティーイベントによって支えられてきたが、ここに来てピンチに。
そこで現在実施中なのが、「コロナ禍で不安を抱えた小児患者家族に安心して滞在できる環境を整えたい」との名称でスタートしたCFだ。
「開設から10年以上が過ぎて、備品なども老朽化したのと、さらなる感染症対策として、全12室にウィルス除去機能付きのエアコンを設置したいのです」
目標金額は200万円だ。再びハウスマネジャーの市辺さん。
「私たちは、ここを単なる滞在施設とは思っていません。
治療や入院手術の最中はご自分のことに手一杯でも、その後、お子さんの病状が回復したときには『自分の滞在時に用意されていて重宝したから』と、“先輩のお母さん”が次の利用者のために、地元のお米などを送ってくださったり。そんな思いやりの絆がつながって成り立っている温かい“家(ハウス)”なのです」
CFは、12月10日まで行われる。(問い合わせは、同施設の電話:042-300-4181へ)