■“脳に霧がかかる”恐ろしい後遺症
1月6日、英国で感染状況を分析している「ゾエCOVIDシンプトム・スタディー」が、オミクロン株の症状についての驚きのデータを発表した。従来株と比べて、せきや胸の痛みなどの肺炎症状を訴える人が少ない一方、「倦怠感(64%)」や「ブレインフォグ(24%)」などを訴える人が多いことが明らかになったのだ。
そもそもブレインフォグとはどんな症状なのか。神経免疫学の権威で、国立精神・神経医療研究センター・神経研究所の山村隆部長に聞いた。
「ブレインというのは“脳”、フォグは“霧”という意味です。言葉が表すように、脳に霧がかかるようにあいまいになったり、時には晴れたりする。そのような変動を繰り返す特徴があります。これまで100人以上のブレインフォグの患者さんを診てきましたが、発症すれば社会生活に大きな支障をきたします」
それまで、しっかりとしていた人でも、ブレインフォグになると一変してしまうことも多いという。
「体は動かせても、思考力が低下して頭が働かない。会社に行っても書類も読めない、字も書けない。会話にもついていけない、そんな状態になってしまう。2人の子どもを育てている40代の主婦のケースでは、買い物に行っても財布を忘れたり、キッチンでガスコンロに火をつけたまま外出してしまうようになりました」(山村部長)
まるで“認知症”のような深刻な症状の正体は、「自律神経が関係する脳の血流障害」だという。
「ウイルスに感染すると体内で異物を排除しようとする免疫反応が起こります。ところが、体内に入ってきた異物を攻撃するはずの抗体が、間違って自分の体のタンパク質を攻撃してしまうと、免疫が正常に働かなくなるのです。この自己免疫反応によって、脳への血流を調整する自律神経の機能が低下した状態がブレインフォグだと考えられます」(山村部長)