■「感染研は厚労省に忖度しているのでは」
ただ、エアロゾル感染を重要視していないように思える感染研だが、実はその対策の重要性は理解しているフシがあるようだ。
感染研の報告書には、論理的に不可解な点があるというのだ。
「エアロゾル感染が主ではないという見方なのに、感染の起こった事例の具体例として挙げているのが《換気が不十分な屋内や飲食の機会等》。飛沫感染と接触感染が主であれば、換気の良しあしは関係ないのにもかかわらず、です。矛盾しています」(本堂准教授)
では、なぜエアロゾル感染が主な感染経路だと発信しないのか。
「そもそもWHOも当初は、エアロゾル感染を否定していましたが、科学的な根拠に基づいて徐々に見解を修正してきた経緯があります。科学に間違いと修正はつきもの。感染研も間違いは認めてアップデートすればいいんですが……」
そう話す清水教授は、「感染研が厚生労働省に忖度しているのではないか」という見方をする。
「国の機関である感染研は、当然、厚生労働省とすり合わせをしていると考えられます。いまさらエアロゾル感染が主だというと、これまでそれを否定する発信をしてきた(分科会会長の)尾身(茂)さんや大臣の顔がつぶれてしまい、責任問題になりかねないという考えがあるのではないでしょうか」
感染研が政府の方針に合わせて、もはやデタラメともいえる古い見解をいまだに押し通し、感染拡大に歯止めをかけられないでいるとすれば、許されることではない。
「感染研は政府の判断に科学者のお墨付きを与えるための“御用機関”のように見えてしまいます。感染症研究のトップとして、科学者の良識と矜持を見せてほしいです」(清水教授)
公開質問状が出された7日後の8日、本堂准教授のもとに感染研から回答が届いた。8日午前に催促をしてやっと届いた返事だった。
だが内容は“ゼロ回答”といっていいレベルのものだ。
「日本学術会議の科学者の行動規範に、“科学者仲間から質問があったらきちんと答えなければならない”ということが書いてあります。それをやらないとすると、もうそれは科学者とは言えないのではないでしょうか」(本堂准教授)
「下手に回答できないから逃げるしかないと考えているように見えてしまいます」(清水教授)
政府の顔色をうかがうのではなく、科学的なデータに基づく対策を、私たちは求めている――。