■医療費発生による受診控えで重症化リスク
東北大学災害科学国際研究所の医師・児玉栄一さんは「5類になっても、ほとんどの人にメリットはないでしょう」という。
「原則公費負担だったコロナの医療費が、3割負担(70歳以上は原則2割、75歳以上は原則1割負担)となる可能性があります。たとえば、PCR検査なら、診察料などを含めると、3割負担でも窓口で払う費用は5,000円以上に。1人でも感染したら、家族全員が検査を受けることになるでしょう。4人家族なら2万円以上かかります」
検査だけではなく、治療にもお金がかかるようになる。
「ファイザーやメルクで開発した経口薬は、3割負担なら2万円程度になるのでないでしょうか。重症化リスクのある人は抗体薬を投与するケースがありますが、これも1回30万円するので窓口負担は10万円ほどです」(児玉さん)
5類になれば、自宅療養が基本になるが、重症化した場合は入院することになる。2週間ほどICU(集中治療室)に入院した場合、1,000万円以上の医療費に。3割負担だと300万円を払う計算だが……。
「1カ月の医療費が一定額を超えた場合、超えたぶんが返金される『高額療養費制度』があります。この場合でも、平均的な収入の人なら、月の負担額の上限はおよそ9万円になります」(児玉さん)
高額療養費の計算は月ごとに行うので、月をまたいで入院した場合、入院費用は18万円もかかってしまう。検査の段階から費用がかかるので、基礎疾患がなく、せきや熱などが風邪程度の症状の人は、受診控えしてもおかしくはない。
「コロナ対応の薬には、早期に服用しなければ効果が低いものがほとんどで、受診控えが原因で重症化してしまう人も出るでしょう。5類にするにしても、検査費を無料にしたり、医療費が3割負担の家庭でも、新型コロナだけは1割負担で対応するなどの補助が必要だと思います」(児玉さん)
さらに気になるのが、ワクチンの接種だ。5類に分類されている「季節性インフルエンザ」のワクチンは、およそ3,000〜3,500円が負担額。一定年齢以上は無料という施策がとられる可能性もあるが、コロナワクチンも自己負担を求められた場合、現在の6カ月ごと年2回の接種で、年7,000円ほどかかる計算になる。夫婦だと、年1万4,000円と、軽くはない負担だ。