医師が懸念する5類引き下げ「死者増えて初めてコロナ拡大に気づくことも」
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■待合室でコロナ患者と基礎疾患を持つ人が

 

『病気は社会が引き起こす インフルエンザ大流行のワケ』(角川新書)の著書もある、医師の木村知さんはこんな危惧をしている。

 

「5類になれば、指定された医療機関だけではなく、一般のクリニックでも、コロナ患者を診察することになります。コロナ禍以前の冬場のクリニックの待合室を思い出してください。発熱者用のブースが設けられているクリニックも一部ありましたが、スペースの問題などもあり、多くのクリニックでは糖尿病患者や高血圧患者など基礎疾患がある患者も、発熱やせきのあるインフルエンザの疑いの患者も同じ待合室を使っていました。感染力が強く、空気感染もある新型コロナウイルスが流行するなか、こうした状況が再現されれば、院内感染のリスクが高まります」

 

感染力の強さばかりでなく、症状においても、まだまだ“普通の風邪”とはいえない。

 

「基礎疾患がない人でも入院することもある。熱が長引いたり、頭痛やめまいで1カ月出勤できないなど、風邪にはみられない後遺症にも遭遇します」(木村さん)

 

新型コロナの感染者の脳を調べたところ、対象者の脳が0.2〜2%萎縮していたという、イギリスのオックスフォード大学の報告も。

 

最前線で新型コロナの患者の治療にあたってきた、埼玉県の「ふじみの救急病院」院長の鹿野晃さんはこう語る。

 

「それも記憶や人間らしさをつかさどる前頭葉や側頭葉にみられました。嗅覚や味覚異常も関連しているのかもしれません。オミクロン株に感染した小さな子ども(1〜4歳)に関しては、10人に1人の割合で熱性けいれんを起こすというデータもあります。脳にダメージを与えたり、窒息死するリスクがあるので、“ただの風邪”と甘く見るのは危険です」

 

そうした恐れもあるため、感染動向を追うことは重要だが……。

 

東北大学災害科学国際研究所の医師・児玉栄一さんは次のように語る。

 

「5類となれば、保健所が追跡をしなくなり、感染状況に関してもつかみづらくなります。インフルエンザでもみられた現象ですが、重症者や死者数が増えて初めて感染増加に気がつくような状況になる可能性があります」

 

一方、5類引き下げのメリットとして、医療崩壊を防ぐ効果があるといわれるが、そう単純な話ではないと、木村さんはみている。

 

「2類相当だと、軽症であっても入院勧告されるため、軽症者でベッドが埋まり、重症患者を受け入れられなくなるとの指摘があります。しかし、実際すでに軽症者は自宅療養が基本とされています。感染者の増加にともなう重症者の増加が病床をひっ迫させるので、5類にしても、病床を増やし、何より感染者を減らさなければ、医療崩壊のリスクはあるのです」

 

現状の2類相当でも、少しずつ規制を緩和することで、経済活動を促すことにも対応できるという。

 

「実際に、感染者の自宅待機日数は14日間から10日間に短縮されました。軽症者が多いオミクロン株は、さらに短縮することも可能だと思います」(児玉さん)

 

“政治事情”での早急な5類引き下げだけはやめてほしい。

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