ゴールデンウイーク直前の4月23日に北海道・知床で起きた遊覧船「KAZU 1」の沈没事故。5月9日時点で、乗客24人、乗組員2人の計26人のうち、14人の遺体が発見されたものの、残る12人の捜索は今も続いている。
あまりにも痛ましい事故の一刻も早い真相解明が待たれるが、数々の“人災”が指摘されている。
「悪天候のため、同業者から出航を控えるよう言われていたにもかかわらず、出航を強行。また運航会社の『知床遊覧船』は、当日、法で義務付けられているルート途中での定点連絡も怠っていたといいます」(全国紙記者)
「知床遊覧船」のトップである桂田精一社長(58)の対応にも疑問が続出している。
事故の4日後の4月27日に桂田社長はようやく会見を行ったものの、あいまいな説明に終始。さらに、桂田社長はこの期に及んであきれた嘘までついていた。
「会見で『運航管理者は船長』と説明していましたが、実際は桂田社長だったことが後に判明。また規定上、運航管理者である社長は原則として事務所で勤務する必要がありましたが、桂田社長は不在だったのです」(前出・全国紙記者)
現在、国主導のもと、真相究明が進められているが、莫大な時間と費用を要するという。
「海上保安庁は、特殊技術を持つ民間企業と8億7千700万円で契約し、行方不明者の捜索を依頼。沈没船の引き揚げは早くとも6月以降になる見込みで、捜索費用と合わせて総額は10億円にのぼるといわれています」(海保関係者)
プロスペクト法律事務所の坂口靖弁護士は言う。
「法律では原則的に運航会社が引き揚げることが決められていますが、遭難した船舶などの困難な場合は例外となります。また調査や捜査の関係上、会社に勝手に引き揚げられても困る部分もあります。証拠物でもあるだけに傷をつけてはいけないですし、観光船についての法整備につながる事件ですから必然的に国での作業になるのではないでしょうか」
当然、これらの費用を「知床遊覧船」が負担すると思いきや……。
「5月6日、引き揚げ費用の一部を国が負担することが報じられました。乗客1人あたり上限1億円の対人賠償保険に入っていたことから、当初、桂田社長は定員65人分に保険が適用され、そこから引き揚げ費用も捻出できると知人に豪語していたそうです。しかし、保険が適用されるのは24人分のみ。
今後、遺族が桂田社長を相手に民事訴訟を起こすことも考えられます。そのため、“社長には資産がないので国が負担せざるをえない”という判断に至ったといいます」(前出・全国紙記者)
桂田社長の杜撰な管理体制の代償として、支払われることとなった億単位の血税。
事故後、知人に電話で「逮捕はないと思う」と語っていたことが報じられるなど、反省の色が見られない桂田社長。このまま遁走できると思ったら大間違いだ。