ついに終わりの兆しが見え始めたマスク生活。しかし、いまも着用しないことに不安を感じる人は多い。外しても安全な場所を、ウイルスの専門家に解説してもらった――。
5月23日、政府は新型コロナ対策の基本的対処方針を変更。マスクの着用について、屋外では、人との距離(2メートル以上)が確保できる場合や、距離が確保できなくても会話をほとんど行わない場合は、マスクを着用する必要はない、とした。また、屋内でも、人との距離が確保できて、かつ会話をほとんど行わない場合は、着用しなくてもよいという。
とはいえ、今でも街中ではほとんどの人がマスクをつけている。どんなシチュエーションだったらマスクを外せるのか迷っている人も多いだろう。
「私は、職場を出るとマスクを取ります。心地よい風が街路樹の葉を揺らしていたら、マスクを外して街歩きを楽しみましょう」
そう語るのは、国立病院機構仙台医療センターの西村秀一ウイルスセンター長。呼吸器系ウイルス感染症研究の第一人者である西村先生が考える“マスク着脱の基準”はどのようなものだろう?
「新型コロナの感染は、感染者から出るウイルスが含まれたエアロゾルを吸い込むことで起こります。エアロゾルとは咳・くしゃみ・大声などによって口から出る小さな飛沫が、長時間空気中に浮いている状態のこと。だから、そのようなウイルスが自分の周りに漂っているかどうかを見極めることが大切です」(西村先生・以下同)
大きな飛沫は放物線を描いてすぐに落下。エアロゾルは希釈されながら風の流れに乗って移動する。
「そもそも、一度の咳が作り出すエアロゾルに含まれるウイルスはごくわずか。さらに地面からの上昇気流も含めて必ず風が吹いている屋外では、エアロゾルは簡単に拡散されます。そのためすれ違った相手が咳をしても、ウイルスを吸い込む確率は低いんです。なので、道を歩いているときには、マスクをつける必要はありません。至近距離で会話をする場合は野外であってもウイルスを吸う可能性があります。しかし、お互いが相手に腕を伸ばしても触れ合わないくらいの距離と、顔に感じられるくらいの風があれば、井戸端会議でもマスクは不要です」
ただし、たとえ屋外でも人が密集した状態や周囲を壁で囲まれたような場所では、エアロゾルは拡散されにくくなる。そのような状態であれば、屋外でもマスクを着用したほうがよいという。