「通常、インフルエンザは南半球からはやり、豪州では7~8月に急増します。その後、北半球に流行が移り、日本では1月くらいに感染のピークを迎えます。ところが、今年の豪州では5月の段階で急増。州によっては、新型コロナとインフルエンザの同時流行“ツインデミック”が起き、医療体制が逼迫しています。当院のある立川(東京都)の小学生や成人でもインフル感染者がすでに見つかっているので、秋から冬にかけ、日本も豪州と同じ状況にならないかと危惧しています」
こう語るのは「ナビタスクリニック」理事長で内科医の久住英二さんだ。
「南半球のインフルエンザは、A型が多いといわれています。A型には香港型、ソ連型がありますが、流行が香港型となると、通常、60~70%といわれるインフルエンザワクチンの有効率が40%に低下。肺炎になる高齢者、インフルエンザ脳症になる小児が増えることが、心配されます」
■インフル予防接種を忘れると惨事に
そもそも、今年のインフルエンザの流行リスクは、無視できない。
「昨夏、赤ちゃんの肺炎や気管支炎の原因ともなるRSウイルスが大流行したのは、その前年にRSウイルスが流行しなかったため、免疫を獲得できていなかったことが原因だと考えられます。2年も流行していないインフルエンザでも、同じことが起こりえます。とくに生まれてから一度もインフルエンザの流行を経験していない0~2歳までのお子さんは要注意です」(久住さん・以下同)
さらに新型コロナも、インフルエンザ同様に季節性であるため、秋から冬にかけて感染拡大することが懸念されている。
「まずは、免疫力が弱まっているため感染の前倒しが起きているインフルエンザから流行し、コロナワクチン接種から時間が経過して、抗体価が下がるタイミングで新型コロナも流行するかもしれません。流行の移行期は、ツインデミックとなる可能性があります」
昨年11月、長崎大学は、新型コロナとインフルエンザの同時感染によって、肺炎が長期化すると発表。英国公衆衛生サービスは、インフルエンザと新型コロナの重複感染者(80%が70歳以上)の死亡率が43.1%だと報告している。
「オミクロン株に置き換わったため以前のデータを当てはめることはできませんが、リスクを避けるためにも感染対策が求められます」
まずは検討しておきたいのが、インフルエンザワクチンの接種だ。
「先月、インフルエンザワクチンの接種後2~3カ月の間は、新型コロナの重症化リスクを90%も減らすという論文が『ネイチャー』で発表されました。例年、10~11月にかけて医療機関に入荷されるので、早めに接種しておくといいでしょう」
もちろん、密な場所ではマスクをして、こまめに手洗い、アルコール除菌することが求められる。コロナ禍で培った感染対策で、ツインデミックに備えよう。