結婚直前の倒れリハビリ11年“全身不随”の夫から妻への4文字のラブレター
画像を見る 入籍翌年、フォトウエディングを。主治医も駆けつけ祝福してくれた

 

■時間にして2分。左手を動かして書かれた4文字「しあわせ」

 

やがて、秀行さんは左手をかすかに動かせるまで回復。リハビリがてら、その左手でペンを持ち、妻の介助のもと、簡単な絵を描くのが日課の1つとなっていった。

 

「そのうち、たどたどしいですが、字も書けるようになって。でも、それは私がリクエストした言葉だけ。自分の内から言葉が出てくるまでには、なかなかならなくて。『こんにちはと書いて』と頼めば書けるけど『どんな気持ち?』と聞いても書けない、そんな感じで」

 

ところが、奇跡が起きる。

 

「今年の1月です。朝から彼、ずっとニコニコと私を見ていて。『言いたいことあるの?』と聞いても、ニコニコだけ。『試しに書いてみてよ』と、いつものペンとスケッチブックを用意すると……」

 

時間にしておよそ2分。懸命に左手を動かし続けた彼が記したのは「しあわせ」の4文字だった。

 

「『え、まさか!?』って、本当に驚いて朝から大号泣しました。『幸せって書いてくれたの?』って聞いても、彼はいまのようにニコニコと笑うだけでしたけど。もう、この4文字とその笑顔で、私の10年間は報われた、そう思えました」

 

病いに倒れる以前の秀行さんは、サプライズが大好きだったという。

 

「何も言わずにカメラをプレゼントしてくれたり。こっそりオヤツを作ってくれたことも。でも、この4文字が、これまでで最大の、サプライズかもしれませんね」

 

こう言って笑う織子さんの目に、光るものが浮かんで見えた。

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