■大平元首相の合同葬では警備費22億円が計上
実際に、数十億円単位の警備費が投入された元首相の葬儀があるという。8月9日に国会で行われた国葬費用についての野党合同ヒアリングに参加した、立憲民主党の大串博志衆議院議員が語る。
「歴代の首相経験者の葬儀の警備費について調べたところ、’80年に行われた大平正芳元首相の内閣・自民党合同葬では、警備活動に必要な経費として22億円の予備費が計上されていたのです。
ただ、それ以外の記録は見つかりませんでした。たしかに、警察の年間の活動予算内で事足りたのであれば、計上される必要はありません。しかし、首相経験者の葬儀には内閣・自民党合同葬であったとしても、多くの警察官が動員され、通常の活動予算内では賄いきれないはず。なぜ記録がないのかは不思議としかいえません」
それにしても自称“聞く耳を持っている”岸田文雄首相は、国民の半数以上が反対している国葬になぜ固執するのだろうか? 政治アナリストの伊藤惇夫さんが語る。
「長く外相を務めた岸田首相ですが、外交はほぼ安倍元首相がやってきたため、海外での知名度はきわめて低い。そのため、国葬に参列する海外の要人との弔問外交で、顔を売っておきたいという思惑もあるでしょう。
また、安倍元首相を支持する保守系の人たちに、国葬を執り行うことで味方になってもらえれば、今後の政権運営に支障を来すことがないという判断をしたとも考えられます」
先の参議院選挙で自民党が大勝し、一強体制が盤石となったことも強行を後押ししている。
「もはや、これだけ国葬に反対する声が強くなっても、その声は岸田首相の耳には届いていないのではないでしょうか」(伊藤さん)
今回、警備費用など国葬の費用について、国葬を執り行う内閣府に確認しようとしたところ“担当者が不在であり、メールやFAXでも質問を受け付けることはできない”とのことだった。
世論を二分するなかでの実施となる今回の国葬。開催意義や費用に関する詳細な説明は不可欠だ。
説明をうやむやにしたまま強行するのでは、国民からの信頼は皆無に。9月27日が岸田政権の“葬式”になりかねない。