元信者で脱会支援する牧師「統一教会2世は、親を否定すると自分はいなくなる」
画像を見る 「脱会したものの、教団を故郷のように感じている2世も。批判的な報道に触れ、彼らはやるせない思いを募らせています」と竹迫さん

 

■合同結婚式に参加するため就職を断念させられていた高校生におじいさんが助け船を

 

やはり、震災の少し前のこと。ある2世の相談に乗っていた。

 

「両親とも旧統一教会信者という、祝福2世の女子高生でした。美容師になるのが夢で卒業後は就職したいと話していたんですが、両親、とくに父親が熱烈な信者で。『合同結婚式までは、花嫁修業をしろ』と、就職活動を妨害されていた。そんな、何事にも横暴な父親への強い嫌悪感から、彼女は旧統一教会寄りの偏った感覚は持ち合わせていなかったのが、幸いしました」

 

竹迫さんは、卒業と同時に彼女を家出させる計画を練った。

 

「一歩間違うと誘拐罪になる可能性もありましたが、そこは私も覚悟を決めて。ご案内したようなシェルターにかくまうことを考えていた。すると、彼女のおじいさんが助け船を出してくれたんです。彼女は祖父母の家に一時的に身を寄せることができました」

 

その後、両親には所在を伏せたまま、彼女は東京に出て一人暮らしを始める。

 

「上京後も何度か会いました。生活は苦しそうでしたが、晴れやかな顔をしていましたよ。お金の苦労にしても、旧統一教会の中にいてはなかなか身につかない、一般的な経済感覚を学ぶいい機会だったのではないでしょうか」

 

一昨年、竹迫さんのもとに、数年ぶりに彼女から連絡があった。

 

「なんでも、バイト先で出会った男性と結婚し、お子さんも生まれ家庭を築いたと。美容師の夢はかないませんでしたけれど、彼女は一般の人にはごく普通の、しかし、2世にとっては夢のような幸せを、手に入れることができたんです」

 

■脱会を促すことは、2世自体の存在を否定することにもなりかねない。

 

竹迫さんは「2世には、とくに繊細な対応が必要」と語る。

 

「2世自身も信者だった場合、軽々に脱会を促すことは避けます。2世も大きく分けて2種類あって。山上容疑者のように、自分が生まれたのちに親が入信した『信仰2世』と、もう1つは、合同結婚式で結ばれたカップルから生まれる『祝福2世』です。とくに、祝福2世の場合、脱会を促すことは団体を否定することを意味し、それは、2世自身の存在を否定することになりかねないからです」

 

竹迫さんは「祝福2世の脱会は、言葉も習慣もわからない海外の街に放り出されるようなもの」とも。

 

「自らが入信した、いわば1世は、脱会後は元々の自分に戻ればいい。でも、祝福2世には戻る自己がないんです。だから、祝福2世が絡む脱会支援の相談を受けたときは、祖父母にあたる人に必ず伝えます。『いままで以上にその家に介入し、お孫さんと良好な関係を築いてください』と。いざというとき、おじいちゃん、おばあちゃんに外の社会での受け皿に、2世たちの逃げ場所になってほしいからです」

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