■「共働きを継続できる環境を整えてもらうことに力を注いでもらいたい」
では実際に、当事者である子育て世代はどのように受け止めているだろうか?
「一時的に支援するのであれば、クーポンや引換券ではなく現金を支給してもらうほうがありがたいです。出産に備えて赤ちゃんの新しい育児用品を揃えたりするのにお金が要るのは確かですが、それを支援してもらったからといって『じゃあ、もう一人産もう!』とは決してなりません」
こう話すのは、現在6歳、2歳、0歳の子供3人を育てている30代の会社員・A子さん。今年4月に第3子を出産し、現在は育児休暇中だ。A子さんは毎日、子供たちを寝かしつけてから22時に就寝し、翌朝は5時に起床している。
しかし、子供中心の生活は体力的にもハードで、しっかりとした睡眠を確保するのは難しいという。
「就寝中も子供の授乳や夜泣きに対応するために起きます。1時間ごとに起こされ、その都度15~30分くらい子供の世話をするので、ほとんど眠れていません。昼寝をできる人もいるのでしょうが、私は昼寝ができないタイプですし、子供の昼寝も抱っこしたままなので横にもなれませんね。抱っこして寝かせているので、ご飯の準備がままならない時もよくあります」
また子供たちが物の取り合いなどで喧嘩することもあるようで、「なるべく怒らずに注意したり、仲裁に入ったりしようとしますが、結局、怒ってしまって自己嫌悪に陥ったり……。時には、私の思い込みで勘違いして“子供が悪い”と怒ってしまうことも。冷静に話を聞いたらそこまで怒ることじゃなかったと気づいて、また落ち込むこともあります」と育児の難しさを痛感するというA子さん。
いっぽう金銭面では、「やっぱり習い事をどこまでさせられるかということでしょうか。多くの選択肢のなかから選べるのは限られているので、どういう風に絞るかは悩みますね」と語る。
育児にかかるお金は出産時だけでなく、進学など子供の成長とともにさらに必要になってくる。来年以降、仕事に復帰する予定のA子さんは「まず、子供を産んだり育てたりするときに何を悩むかというと、仕事と育児を両立していけるかどうかなんです」と指摘し、こう続ける。
「育児休暇の期間は子供が1歳になるまで。もしくは保育園に入れなかったら1年半~2年まで延長できますが、職場復帰した後に時短勤務するとなると給与が減らされてしまうこともあります。その減らされた分の給与を補うような制度や、仕事をしたくてもうまく時間が作れずに辞めてしまう人をフォローしてもらえるとありがたいです。
例えば、子供が小学校に入学して児童館に行き始めたら、預かってもらう時間を延長できるようにするとか。クーポンなどでその場しのぎの消耗品を提供するよりも、継続して共働きできる環境を整えてもらったほうが『もう一人産みたい』という思いも出てくるのではないでしょうか……」
少子化が進むなか国を挙げた子育て支援はありがたいが、岸田政権には当事者の声にもっと耳を傾けてもらいたいものだ。