■脳卒中を起こす可能性が50%も増加する
海外でも、後遺症に関する大規模な研究が行われている。9月22日付の医学雑誌『ネイチャー・メディスン』には、コロナに罹患することで認知障害をはじめ、さまざまな病気のリスクが上昇するという衝撃の研究結果が発表された。
ボストン在住の医師で医学博士の大西睦子さんが、この論文を次のように解説する。
「この研究によると、コロナに感染した人は、感染していない人と比較して、1年以内にパーキンソン病やてんかんなどの神経疾患を患う率が7%増加、脳卒中を発症する率は50%増加、記憶障害を発症する率に至っては、なんと77%も増加したというのです。さらに、コロナ罹患者は罹患していない人に比べて、1千人あたりのアルツハイマー型認知症の発症者が多いことも明らかになりました」
この研究は、セントルイス・ワシントン大学の臨床疫学者のジャド・アルアリー博士らが行ったもので、’20年3月から’21年1月15日までにコロナに感染して30日以上生存した15万4千人を1年間追跡。同時期に感染しなかった560万人と、コロナ禍以前に調査した580万人のデータと比較した。
「オミクロン株が出現する以前の従来株での研究データですが、参考値として見ることはできます。
とくにアルツハイマー病の増加に関しては、アルアリー博士が『素因を持っていた方が、コロナによって発症が早められたのでは』と興味深い分析をしています。これまでの研究論文では、コロナによって起きた脳の炎症がアルツハイマー病の発症に影響している可能性があるとも言われているので、コロナ感染が認知症の発症リスクを押し上げた可能性があるのです」(大西さん)
コロナ感染と認知症発症リスクについては、さらに恐ろしい関連も指摘されている。米国のケース・ウエスタン・リザーブ大学の研究では、’20年2月から’21年5月までの間に医療機関を受診した65歳以上の患者600万人以上の記録を調査。すると、コロナ陽性となった人は、そうでない人に比べ194%アルツハイマー型認知症になりやすいことが明らかになったのだ。