物価高に増税、少子化、年金の改悪……。私たちの家計がますます火の車になった岸田政権下の2022年を振り返り、経済ジャーナリストの荻原博子さんが警鐘を鳴らすーー。
ますます少子化に拍車がかかり、改善が見られません。2022年の日本の年間出生数は、統計の開始以来初めての80万人を下回る見通しです。これまでの少子化に加え、新型コロナの影響もあるのだろうと分析されています。
子どもの貧困問題に取り組むNPO法人「キッズドア」が、経済的に困窮し支援が必要な子育て家庭を対象に行ったアンケート調査では、ほぼすべての家庭が「家計が厳しくなった」と回答。出費を減らしている項目は、「洋服などの費用」74%、「日用品の費用」62%などのほか、もっとも多いのは「食費」の84%。子育て世代はそれほど苦しいのです。
国は2023年以降「出産・子育て応援交付金」を、新生児1人当たり10万円相当のクーポン券などを支給することにしました。また、「出産育児一時金」についても現状の42万円から50万円に増額する方針で、岸田首相は「こどもまんなか政策だ」と胸を張りました(2022年12月10日)。でも、本当の意味での支援になっているのでしょうか。
出産・子育て応援交付金は、先述の通りクーポンで配布されます。クーポンは子育て用品に交換できるものですが、当然ながら現金より使い勝手はよくありません。それでもクーポンにこだわるのは、現金を送ると「使われずに貯金に回る」「子育て関連じゃないものに使われる」などと思っているからでしょう。ですが、余裕のある家庭は子どもの将来のために貯金するし、余裕のない家庭は今日の食事に使うのが当然ではないでしょうか。
クーポンの作成や配布には、事務費用や郵送費用などが掛かります。現金給付よりコストがかかるクーポンにこだわるのは、業者との癒着などがあるのかと疑いたくなります。
また、近年出産費用が上がっていましたから、出産育児一時金の増額はありがたいことでしょう。ただ子育てにお金がかかるのは出産時だけではありません。
特に重くのしかかるのは教育費ではないでしょうか。日本の高等教育への国の支出はOECD諸国で最低レベルです。子ども1人当たりにかかる教育費は、すべて国公立でも1千万円、すべて私立なら2千万円を超えるといわれます。それだけの経済力がないと思う方は、子どもを産むのをあきらめるでしょう。それが少子化の原因の1つだと思います。
一時的なクーポン配布などではなく、教育費をどう支援するのか。抜本的な教育支援こそが、少子化の解消につながる1つの方法ではないかと思います。