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静岡県裾野市の「さくら保育園」で起きた園児虐待で3名の保育士が逮捕された暴行事件を皮切りに、各地の保育園で続々と不適切保育が発覚。あまりに酷い虐待行為が大きな反響を呼び、社会問題となっている。だが、虐待で書類送検されたり、逮捕される保育士がいる一方、大多数は責任感の強い保育士であり、逆に、家庭で虐待を受けている子どもやネグレクトされている子どもに休日返上で対応する者もいるのが事実。結局のところ、最大の被害者は子どもたちなのだ。

 

豊富な取材実績と現場感覚をもとに話題作を次々と発表。『誰かたすけて~止まらない児童虐待』(リーダーズノート)『ルポ 居所不明児童 ――消えた子どもたち』(中央公論新社)など子どもの虐待問題の著作も多い、ジャーナリストの石川結貴氏はこう話す。

 

「家庭や保育の現場で、一定期間に渡り虐待を受けたお子さんは人への不信感を持ってしまったり、低い自己肯定感に苦しむようになってしまう可能性があります。ただ、成長過程で、虐待やいじめ、貧困や差別により理不尽な扱いを受けるお子さんは一定数存在しますが、だからといってそういう子どもの一生が台無しになってしまうと決めつけてはいけないと思います」
児童養護施設や子ども食堂などのボランティア活動を通して、ネグレクトや虐待を受けてきた多くの子どもたちに接してきた実感として石川氏はこう話す。

 

「虐待に遭ったお子さんはとかく悲惨なキーワードで語られてしまう。ですがそうではなく、子どもなりに、理不尽な記憶と葛藤を抱えながらも、周りの大人の支えがあって立ち直って立派に自立して生きていくケースも少なくはありません。そのためにも、傷ついた子どもたちを周りの大人がどうフォローするかを考えなければなりません」

 

フォローどころか、昨今は虐待やネグレクトが問題になった家庭を排除する風潮があるという。『あの子の家はネグレクト家庭だから距離を置かなければ』『あの人は虐待家庭で育ったから、自分が親になったら子どもを虐待するよ』などと偏見の目を向ける人も少なくないと石川氏は指摘する。

 

「親と子は別の存在なのだと認識することが大事です。『あんな家の子と遊んではダメだ』とか、『親がこんなとんでもないから、子どももダメな人間になる』という偏見を持たないでほしい。その上で、子どもは大きな可能性を秘めた存在ととらえて下さい。困難や苦しみ悲しみがあったとしても、それでも人はそれを乗り越えて生きていくのだということを前提に、自分のお子さんだけではなく、子どもはひとりひとり守られるべき存在であるという、社会的な目線で見てあげていただきたいのです」

 

いちばんの被害者である子どもたちひとりひとりが自己肯定感と、とにかく生きていていいんだという安心感を与えられる世の中にしていくために、我々大人ができること。真剣に議論するタイミングが来ているのではないだろうか――。

出典元:

WEB女性自身

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