■介護費用「倍増計画」も議論されている
たとえば、パート労働者の負担の拡大も予定されている。現在、月収8.8万円(年収約106万円)以上、週の労働時間が20時間以上、勤務先の従業員数が101人以上などの一定条件を満たすと、社会保険に加入し、厚生年金や健康保険料を支払わなくてはならない。
「2024年10月からは、新たに『従業員数が51人以上』となり、対象者が増えます。これまで年収106万円だった人の所得税や住民税は年間1万円以下でしたが、社会保険に加入すると、給与の15%近くにおよぶ社会保険料負担が増え、年間約15万円も手取りが少なくなります。もちろん、将来の厚生年金が上乗せされますが、明らかに負担増と言えるでしょう」(板山さん)
現役世代だけではなく、高齢者を狙い撃ちにしたものも。生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんはこう解説する。
「2024年度から、後期高齢者(75歳以上)の医療保険料の上限が段階的に引き上げられます。それに伴い払う保険料も上がっていきます。現在は平均で1人当たり年間約8万2000円の保険料だったのが、2024年度には約8万6千円、2025年度には約8万7千円に」
医療だけでなく、介護でも負担増の流れが。
「一定の所得のある65歳以上の高齢者の介護保険料の見直し案が、2024年度の改正に向けて審議されることになりそうです。さらに影響が大きそうなのが、2024年度から介護サービス利用料の2割負担の対象者を拡大しようとする動きです」(柏木さん)
所得に応じて自己負担割合は違うが、現在、約8割の人の自己負担割合は1割になっている。要介護1だと1カ月あたりの介護費用支給限度額は16万7650円。介護サービスを上限まで利用した場合、負担割合が1割だと自己負担額1万6765円で済むのに対し、2割となれば、倍の3万3530円を負担することになる。介護関係者はこう警告する。
「介護財源が逼迫しており、そもそも介護認定を取ることが厳しくなっています。保険料ばかり上がって、サービスは受けられないという状況になりかねません」
■“自助努力”の土壌ばかり整備されていく
生活は苦しくなるばかりだが、今後も増税は続く可能性が高いと、前出の平野さんは指摘する。
「所得のうち、税金と社会保障費が占める割合である国民負担率は、現在は46%ほどです。しかし、早晩に50%を超えることは確実。IMF(国際通貨基金)は『’30年までに消費税を15%に』と過去に提言しています。財務省に近い岸田首相は、在任中に消費税15%への道筋を作るのではないでしょうか」
一方でNISAの投資上限額は拡大され、非課税期間の上限も撤廃される見込み。すでにiDeCoも加入要件の緩和は行われており、4月からの生命保険料控除の拡大も議論されるなど、“自助努力”の後押しだけは進んでいる。“お金はとるけれど、老後は自助で”というのは、あまりに身勝手な話ではないかーー。