■肺炎以外にも持病の悪化も死を招くことに
恐ろしいのは、複数のウイルスに同時感染する可能性があることだ。コロナ患者7000人を調査したイギリスの研究チームによると、新型コロナとインフルエンザに同時感染した“フルロナ患者”は、コロナだけに感染した患者に比べて「人工呼吸器の装着」が4.14倍、死亡が2.35倍に。同時感染で重症化することが示されている。
RSウイルスと新型コロナやインフルエンザとの同時感染による重症化リスクを調べた研究はまだ報告されてないが、流行時期が重なる場合、同時感染する“トリプル感染”にも注意が必要だ。
このトリプルデミックが日本で起きた場合、今でも逼迫している医療体制が壊滅的なダメージを受けることは想像に難くない。
内科医で、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長が語る。
「新型コロナの致死率は、オミクロン株以降変わっていません。それでも死亡者数が増えている背景には、年末年始に人の移動が活発になり、感染者が増加したことが大きいでしょう。また、“コロナ肺炎”を起こして亡くなるより、老衰、心不全、誤嚥性肺炎など高齢者を中心にコロナ感染をきっかけに持病や状態が悪化して亡くなるケースも引き続き多いです。新型コロナについては感染力や重症化リスクが高いことなどを理由に入院できる病院を一部に限定。つまり呼吸器内科や感染症の専門医が生活習慣病の治療や終末医療を担っていることも医療逼迫の一因なのです。この医療体制を整え、持病や状態悪化にはかかりつけ医や専門性の高い医師が診るような体制にする必要があります。今の状態でトリプルデミックが起こった際に、医療体制の崩壊が危惧され、新型コロナによる死亡者が倍増する危険性もあるのです」
最後に森内教授が語る。
「インフルエンザ、RSウイルスの感染対策の基本は、新型コロナとほぼ同じです。これまでの感染対策をしっかり心がけましょう。しかしワクチンがないRSウイルスの感染を防ぐには限界があります。症状がある場合は早めに受診しましょう」
このままのペースだと、第8波だけで死者2万人を突破する恐れがあるが、トリプルデミックが起こると死者数の増加に拍車がかかることは間違いない。
トリプルデミックによる医療崩壊を起こさないためにも、一人ひとりの行動が重要だ。