■イギリスの通信社からもオファーを受け 「これからは英語も覚えなあかんな」
〈♪15 68 ないのさ関係……絶対吐きたくねぇのは弱音 甘えてばっかじゃ 高くは飛ばねえ 自分らしく持つ誇り……金金金金 金くれよ〉
『金くれよ』も、赤ちゃん婆ちゃんの人気曲の一つ。元となるリリックを書いたのはでこ八だ。
「わたしの詞に、玄武が韻を踏ますなど手直ししてくれます。テーマ? もう、感じたことを、そのまんま」
この曲作りにも、あるきっかけとなる実体験があったという。
「若いラッパーのコたちは、もう大会に出るだけで満足して、ギャラをもらってないことも多かった。でも、それはナンセンス。わたしは10代のころ漫才をやっていたんですが、どんな小さな舞台でも、呼ばれたらギャラをいただいてた。それが明日の頑張りにつながった。
だから、主催者の方には、少額でも、きちんと報酬を出してあげてほしいと、そんな年寄りの気持ちをリリックにしたんよ」
いつも前向きなでこ八だが、最初にバトルに出たときは、少しためらったと打ち明けた。
「バトルとなると、罵り合いみたいで、正直、イヤやったんです。でも、プロデューサーさんから、『おばあさん、勝ち負けは関係なく盛り上げるためにお願いします』と頼まれて、じゃ1回だけ、と。
いざ出ると、このわたしが頭が真っ白になっとる(笑)。漫才の舞台では、一度もアガったこともなかったのに。その緊張感がまたよくて、ハマったんやね」
そしてバトル出場を通じて、祖母として、一つの発見があった。
「この孫の玄武がね、ふだんは物静かなコなんやけど、いったんステージに立つと、ラップのリズム感もバツグンやし、ようしゃべる。
いちばん驚いたのは、わたしの分のリリックまで覚えてて、フォローしてくれた。また、折にふれて『薬は飲んだか』と聞いてくれる。ああ、このコは案外に頼もしいとこあるんやと、ばあちゃんとしては素直にうれしかった」
そしてラップをしていると、いつしか痛みも消えていたという。
赤ちゃん婆ちゃんは快進撃を続ける。イギリスの通信社からもオファーを受け、いよいよ今年は世界デビューか。
「これからは英語も覚えなあかんな。日本語のラップでも苦労してんのに(笑)。英語になったら、わたし、なんと自己紹介しましょうか」
隣から玄武が、
「ジャパニーズ・クレイジー・グランドマザー、かなぁ」
すかさず、でこ八、
「いや、そこは、クレイジーやなしに、グレートにしといてや!!」