「次の世代に美しいバトンを」坂本龍一さんが死去3日前に本誌へ寄せた“神宮外苑の再開発”への警鐘
画像を見る 神宮外苑は国内外の人々から大人気だ(写真:時事通信)

 

■坂本さん「まだ立ち止まることはできるはず」

 

神宮外苑のイチョウ並木は外国人観光客にも人気のスポットだ。しかし、移転させた神宮球場のスタンドが並木のわずか6メートルまで接近するため、根を圧迫し、数年のうちに枯れる可能性が高いという。

 

ラグビー元日本代表の平尾剛さんも移設反対の署名を集め、28日には小池都知事に提出した。

 

「計画されているラグビー場は、屋根付きで人工芝。しかも、収容人数が1万5千人と6割に減らされます。秩父宮は75年続くラグビーの聖地なのに、たくさんの樹木を伐採してまで移設・新設する必要が、どこにあるのでしょう」

 

東京新聞の調査では、都民の約7割が再開発に反対。周辺住民など60人が今年2月、東京都に認可取り消しを求める裁判も起こした。原告団長で実業家のロッシェル・カップさんは、こう憤る。

 

「神宮外苑は都心の一等地。事業者からすれば、お金のなる“おいしい土地”なんです。これを認めれば、日本中で同じような再開発を認めることになります」

 

カップさんが指摘するように、東京都の日比谷公園、青山公園、芝公園、葛西臨海公園のほか、横浜や神戸の公園でも、同様の再開発計画があるという。

 

原告の一人に名を連ねる東京大学准教授で経済思想家の斎藤幸平さんも、「再開発は世界の流れに逆行している」と、こう続ける。

 

「先人たちが寄付を集め、100年後の東京が世界に誇れる場所になるよう願ってできたのが神宮の杜。SDGs(持続可能な社会にするための取り組み)を掲げる企業が何も考えずに破壊するのは愚かです。ニューヨークでは100万本の植樹が始まっていますし、パリのシャンゼリゼ通りでも片道4車線を2車線に減らして植樹しています。日本だけが、一部の企業の利益のために逆行しているのです」

 

坂本さんも、冒頭に続けて環境破壊についてこう懸念を示していた。

 

「まだ立ち止まることはできるはずです。そうでなければ、美しい自然と景観を守ることができなかったことを子どもたちに詫びなければなりません。誤りに気づいたら考えを改める。ネイティブアメリカンに『7世代先を考えよ』という教えがあります。私たちは彼らのように賢明ではありませんが、せめて次の世代に美しいバトンを渡したい。まだできることがあるはずです」

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