岸田政権“異次元少子化対策”で課される社会保険料1.6万円増の重荷
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■防衛費の増額で余裕のない国家財政

 

ここまで負担を増やしたとして、少子化に歯止めはかかるのか。

 

政府の“たたき台”を見ると、児童手当や給付型奨学金の拡充、保育士の待遇改善など意義のある項目もある。しかし、学校給食無償化は「課題整理」にとどまる。

 

法政大学前総長で同大の名誉教授である田中優子さんも、たたき台の内容だけでは、少子化対策には不十分だと指摘する。

 

「よい政策もありますが、肝心の高等教育の無償化が抜けています。

 

若い人たちが子どもを生み育てることをためらうのは、経済的な不安があるから。男女問わず非正規やフリーランスが増え、自分たちの生活基盤すら危ういため、そもそも家庭を持つことができません。

 

子どもが小さいうちは何とかなったとしても、大学進学を考えたとき、〈財力がなければ子どもを大学にやれない。そうなると就職もできないかもしれない〉と考えて、子どもをあきらめてしまう。もはや、子どもは贅沢品のようになってしまっているのです」

 

たたき台にも、基本理念として、「若い世代の所得を増やす」ことが掲げられているが、これにつながる施策は明記されていない。そのうえ若者の可処分所得を圧迫する“社会保険料”での財源の捻出は本末転倒のように見える。

 

また、岸田政権にとっての優先度は防衛費と比べると低いことが明らかだ。

 

「これまで子どもの教育費には予算を付け渋ってきたのに、防衛費への予算は財源を明記せずポンと付けました」(田中さん)

 

防衛費の場合、’23年度から5年間の予算総額を43兆円と、規模を先に決めたうえで具体的な内容や財源を議論。’23年度予算では、防衛費として前年比1.4兆円増の約6.8兆円が計上された。

 

しかし、子育て予算について岸田首相は「数字ありきではない」と、これまで“異次元”の規模感を明らかにすることを避けてきた。今回提示された少子化対策が、どこまで実現されるかも不透明だ。今後、歳出改革によって生み出される金額も、まずは防衛費に充てられる可能性が高い。

 

’23年度の予算は、114兆円と過去最高額となっている。歳出をこれ以上増やすには“増税”が避けられないのだ。

 

前出の伊藤さんも、こう憤る。

 

「全世代で子育て支援をするというなら、金融所得に対する低い税率を大幅に引き上げるなど富裕層への課税を増やして税金から賄うべきです」

 

国を担ってきた高齢者や、これからを担う若者にばかり負担を押しつけるのでは、国の未来はない。

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