■10万人当たり発熱外来数が最も少ない千葉、最も多い鳥取
さらに、今後は全国的に「増えるどころか減る可能性もある」と、前谷さんは警鐘を鳴らす。
「5類移行後は、これまで保健所が担っていた入院調整も医療機関が行うことになります。業務はかなり増えるので、本来なら診療報酬を上げていただきたいところですが、実際はそうなっていません。
さまざまな公費負担がなくなるため、検査キットや防護服、マスクなどを購入するにしても医療機関の持ち出しになってしまいます」
持ちこたえられないクリニックは発熱外来をやめてしまう可能性があるのだ。
今後増えるどころか減りかねない発熱外来。実は人口あたりの外来数は、都道府県によって最大約4倍もの差がある。本誌は各県の発熱外来の設置数と人口から算出した10万人当たりの「発熱外来数ランキング」を作成した。発熱外来が少ない県は千葉県(16.24件)、沖縄県(19.89件)、埼玉県(22.04件)と続く。反対に、設置数がもっとも多いのが鳥取県(57.56件)。つまり、住んでいる地域によって「命が左右されかねない」というわけだ。
なぜ、ここまで開きが生じるのか。医療制度研究会の副理事、本田宏さんは、こう指摘する。
「医師の数は“西高東低”で西に多い傾向があります。発熱外来数が3番目に少ない埼玉は、人口10万人あたりの医師数がもっとも少なく、千葉もワースト4位。医師が少ないため、発熱外来を設置する余裕がない可能性があります」
千葉県の健康福祉課に発熱外来の数が少ない理由を問い合わせると、「千葉県は47都道府県のなかでも最下位に近いほど医療機関の数が少ない」のだという。
これまで波が来るごとに“医療崩壊”が起こっていたが、5類移行後に第9波がやってきたらどうなるのか。
「これまでも、受診できる医療機関を探すのに苦労しましたが、今後ますます、そうしたケースが増えると思います」(前谷さん)