■沖縄の基地周辺でも汚染が問題に……
じつはPFASは、基地や空港などで使用される泡消火剤にも含まれており、かねてから米軍基地の多い沖縄での汚染が問題になっていた。東京の多摩地域にも在日米軍横田基地(東京都福生市)があり関連が疑われている。
5月1日に発表された多摩地域住民の血液検査の中間報告(表参照)では、特に横田基地の南東にある国分寺市や立川市などで血中PFASが高い傾向があった。多摩地域16市町のうち、もっとも住民の血中PFASの平均値が高かったのは国分寺市で、環境省が2021年度に国内3地点で実施した平均値より約5倍高かった。
東京都が調査した地下水のPFAS濃度でも、横田基地から南東の自治体にかけて汚染濃度が高いという結果が出ている。
「横田基地の地下水は、およそ北側から南東へ向かって流れています。つまり、横田基地内の土壌汚染が地下水に流れ出ていると推測されます」(根木山さん)
さらに東京新聞の取材では、横田基地東側の立川市にある“横田基地モニタリング井戸”で、私有地のため非公開だった井戸のPFASの値が、都内で最高値となる1340ng/Lと、基準値の約27倍に上っていることも判明した。こうした事実を受け、多摩地域の住民の血液検査を分析している京都大学(環境衛生学)の原田浩二准教授も、「横田基地が主要な汚染源であることは疑いようがない」と断じている。
PFAS汚染が深刻な沖縄で調査を行う環境NGOインフォームド・パブリックプロジェクト代表の河村雅美さん(琉球大学非常勤講師)もこう指摘する。
「基地や飛行場では、恒常的にPFASを含む泡消火剤が使用・蓄積されているため、沖縄でも周辺の土壌や近隣の河川、さらに湧き水を利用した公園の水からも高濃度の汚染が見つかっています」
懸念されるのは、汚染された水を摂取した場合の健康への影響だ。前出の原田さんは、こう話す。
「長期間にわたって摂取した量が多い方は、一定の疾患にかかりやすくなるといわれています。たとえば、血中のコレステロール値が上がる脂質異常症や、甲状腺機能低下症、腎臓がんなどにも影響していると考えられています」
このほかにも、妊娠しにくくなる、精子の数が減少するなどの生殖機能への影響や、子どもの成長の遅れ、さらには乳がんや前立腺がんへの影響も指摘されている。
「多摩地域の住民で血液検査を受けたある女性は、『適正体重なのに、親子で脂質異常。PFASに汚染された水を長期間飲んでいた影響があるのかも』、と心配しておられました」(前出の根木山さん)
会では、地域の医療機関と連携し、血液検査を受けた住民を対象に医療相談を始めている。