■「駅前のキッチンカーでみんなでクレープ食べたな」と思い出してくれれば最高に幸せ
「家の前にプレハブを建てて小さな加工場にする予定。加工場があれば、余った果物をジャムにしたり、まだ、できることがあるから」
現在の目標を尋ねると、秋吉さんは笑顔でこう話した。彼女の夢は、キッチンカーだけでは収まりきらないということなのだろうか。
「じつは、キッチンカーを手伝ってくれている女のコがいるんです。彼女、将来についていろいろ悩んでいるみたいで。でも、すごく真面目ないいコだから、私が力になれないかなと。加工場があれば、2年間、そういうところで働けば、調理師試験の受験資格が得られるんです。彼女が将来、どうなりたいか、それに私の体がそれまでもつかもわからないけど。資格が取れたら、それが彼女の何かのきっかけや、生きていく自信にもなると思うから」
うなずいていた夫。記者に向かって「言ったとおりでしょ」と、相好を崩してみせた。
「自分より誰かのこと。自分の子どもかどうかなんて関係なし。いつも彼女はこんな感じなんです」
横槍を入れた夫をジロッと睨みつけてから、秋吉さんが続けた。
「私は、息子たちはもちろん、地域の子どもたちの思い出になりたい。将来、大人になったとき『秋吉のおばちゃんのキッチンカーで、みんなでクレープ食べたな』って、思い出してくれたら最高に幸せ」
それは、巡りめぐって、いつかは3人の息子たちのためにもなると、秋吉さんは信じている。
「町の子どもたちには、そうやって信頼し合える仲間を作ってもらいたい。それは、息子たちもそう。私より、仲間のほうが絶対、長生きしてくれる。そして、仲間がいつか彼らの助けになってくれると信じてる。だから、私はキッチンカーを、命の限り続けたいんです」