’07年の民営化前に郵便局に預けた定期貯金や定額貯金などは、満期から20年2カ月たつと権利が消滅します。’20年度は369億円、’21年度は457億円、’22年度は197億円もの貯金が、預けた本人の権利がなくなり国のものになってしまいました。
民間銀行だと10年間引き出しや預け入れなどの取引がないと「休眠預金」になりますが、手続きすればいつでもお金は戻ってきます。
ですが、’07年以前の定額貯金など満期がある郵便貯金は、郵政民営化の際、ゆうちょ銀行には引き継がれず「郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構(郵政管理・支援機構)」が管理。「旧郵便貯金法」が適用されるため、ほかではありえない権利消滅が起こっています。
郵政管理・支援機構は、満期後20年目に「権利消滅のご案内(催告書)」を送りますが、引っ越しなどで受け取れなかった方も多いようです。’21年度に送った催告書の約8割が宛先不明などで届かなかったという報道もあります。
権利消滅後に貯金の存在に気付いても、天災や事故など“真にやむを得ない事情”があり払い戻し請求ができなかったと証明する書類がなければ払い戻されませんでした。「自分のお金なのになぜ没収されるんだ」といった苦情も多く、’23年9月に総務省が基準の緩和を要請。’24年1月4日から払い戻し基準が緩和されました。
たとえば子の名義でつくった貯金があり、それを親から聞いてなくて名義人が知らなかった場合などは払い戻しOKになりました。その際、証明書類がなくても払い戻し請求を受け付けてくれます。ただ、これまで同様、貯金者本人が「権利が消滅するとは知らなかった」という理由では返金されません。
’90年ごろの定額貯金は6%超の高金利。100万円が10年で150万円になると大人気で持っていた人も多いはず。それが10年で満期を迎え、その後20年2カ月たって権利が消滅するのが’20年度、’21年度です。冒頭の消滅資産の多さからも当時の人気ぶりがうかがえます。
いつでも出金できると思っていたら忘れてしまった。実家を片づけていたら古い通帳が見つかったという方などは自己判断を避け、ゆうちょ銀行に相談して。
また、通帳や証書はないが預けた記憶がある方や、相続の関係で親の郵便貯金を確認したい方は、「郵便貯金の現存調査」を申し込めます。姓が変わった方は、旧姓でも調べてもらうといいでしょう。
たとえわずかな貯金額だとしても、大切な自分のお金。みすみす没収されては困ります。郵政民営化前の定額貯金などはすべて満期を迎えていますが、20年2カ月の消滅期限前のものもあります。この機会に古い通帳などを整理してみてください。
特に高齢の親世代は忘れていることも多いもの。思い出話をしながら埋蔵貯金を探してみましょう。