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4月17日に、東京・原宿の神宮前交差点に新しい複合施設「ハラカド」が開業。「新たな原宿カルチャーの創造と体験の場」として、買うだけでなく体験もできる施設としてリニューアルした。

 

「ハラカド」開業は、渋谷駅から半径2.5kmの広域渋谷圏「Greater SHIBUYA」と呼ばれる再開発の一環で始まったもの。今後も今夏に「渋谷サクラステージ」の開業や、来年には代々木公園がスポーツパークやフードホールを備えた施設への着工が予定されている。

 

「Greater SHIBUYA」計画を含めて、渋谷・原宿エリアでは「100年に一度の再開発」とも言われる凄まじい大改革が進んでおり、18年に「渋谷ストリーム」、19年に「渋谷スクランブルスクエア」、20年には「MIYASHITA PARK」などが次々と開業している。

 

しかし、そんな渋谷の再開発には賛否があるようで、ハラカド開業当日、SNSでは《ハラカド今日からなら覗いてみようかな》といった声があった一方、こんな声も。

 

《ミヤシタパークとかヒカリエみたいな施設はつまらないしこれ以上もういらないから、おもしろいお店いっぱい入ればいいなー》
《同じような施設ばかりできて同じような店ばかりだけど差別化できるのか》
《コンドマニアのあった場所ですか。どんどん原宿が小綺麗になって、原宿らしさが失われていきますね》

 

なぜ渋谷の再開発は毀誉褒貶が激しくなるのか。そこで、都市の変化について詳しいチェーンストア研究科兼ライターの谷頭和希氏に話を聞いた。まず、谷頭氏は渋谷の街としての“立ち位置“の変化を指摘する。

 

「90年代や2000年代は『マルキュー』『カリスマ店員』といった言葉がブームになるなど、”特別な街”というイメージが強かった。ただ、今はいろんな人に話を聞くと『単純に乗り換える時に通るから行く』みたいな意見が増えているんです。つまり、『特別な街』から『便利な街』になったといえます」

 

谷頭氏はこう指摘できる一因として、2000年代以降の再開発によって渋谷からベンチやフリースペースといった滞留できる場所が減少してしまったことをあげる。街の治安を向上させるのが狙いだというが、無料で“たむろできる“場所が減ったことで、若者にとっては居づらく、ただ「通るだけ」「使うだけ」の街になってしまったという。

 

「そもそも日本は、本来『たむろする』場所である公園や広場を作るのが苦手な国です。“広場“という概念の根付き方が欧米諸国に比べると弱い。それもそのはずで、“広場”という概念自体が、明治時代に輸入された結果、とりあえず国家が主導して“広場を作ります”といった形になっていった。つまり、トップダウン式で『与えられたもの』として広場があって、人々が自主的にそこで交流したり、そこを使うということがあまりなかった。今、『駅前広場』とかを見てもそうですよね。そういった場所が交流拠点になっているかというと、全くなっていない。公園も似たような形で、我々の選択肢の中に、公園のベンチで時間を潰す、みたいな選択肢がほとんどない。ある意味では、日本に公園という概念が根付かなかった証拠だといえるかもしれません」

 

そんななか、渋谷で滞留できる場所として「MIYASHITA PARK」をあげる谷頭氏だが、

 

「MIYASHITA PARKは渋谷近郊でほぼ唯一、無料でだらっと入れる場所だと思っています。実際にそこに行ってみると、高校生たちが芝生でごろごろしながらずっといたりしますし、夜に行くとTikTokを撮っている中高生がたくさんいる。ただ、MIYASHITA PARK自体も、元々ホームレスの人たちが滞留していた場所を浄化する形でできたので、複雑な話ではありますが」

 

では、再開発によって“渋谷から追い出される”ような形となってしまった若者たちは、どこにいるのだろうか。

 

谷頭氏は、東京工業大学教授・柳瀬博一氏の著書を引用した上で「若年層・ヤングファミリーの率が高い町トップ10のかなりの数が“国道16号線沿線”の街になっている」と指摘。国道16号線とは、首都圏を大きく囲んでいる一般国道で、神奈川なら横浜や町田、埼玉なら柏とか春日部などが該当し「現在、注目度が高いエリア」だという。

 

「国道16号線沿線を見ていくと、遊園地やテーマパークや、動物園、水族館など色々あるんですよね。ただ、若者の居場所、ということを考えた時に大事なのは、ショッピングモールだと思います。
実際、さまざまなショッピングモールを見てみると、その中にあるフードコートやゲームセンターで若年層がだらだら過ごしています。また、モール内でブラブラするだけでも結構楽しめますよね。まるで、街ブラをしているかのようです。あとは何より、座る場所が多いので、そこもたむろできる場所の要因の一つになっていると思います。僕は、若者が『千円程度でだらだらすること』を『せんだら』と呼んでいますが、そうした『せんだら』需要を満たしてくれる場所の一つがショッピングモールなのではないかと思います」

 

果たして、若者が離れた渋谷はどのような道をたどるのか。

出典元:

WEB女性自身

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