■節約の方法がない避けられない値上げ
こうした負担増に加え、さまざまな値上げが国民を苦しめている。
「しかも、安いものを探したり、ほかのもので代用したりすることのできない、節約の余地がない値上げが増えています」(柏木さん)
まさに、一度ハマったら抜け出せない“泥沼”のような値上げだということだ。代表格が住宅に関するもの。
「賃貸住宅の家賃の値上げや、マンションの管理費や修繕積立金の値上げが相次いでいるのです」(柏木さん)
全国賃貸管理ビジネス協会がまとめている「全国家賃動向」によると、2024年5月の全国平均賃料は、前年同月に比べ2.8%増だった。
さらに、総合不動産コンサルティングサービスなどを行う「さくら事務所」の調査(2022年)では、2017年からの6年間で、都心部の管理費の平均額が約1.2倍、修繕積立費の平均額は約1.5倍になったと報告。増加傾向にある。
「もちろん家賃の引き上げなどは交渉の余地はありますが、一度上がってしまったら、引っ越しをする以外に支出を減らすことは難しい。対策の取りようがほとんどありません」(柏木さん)
同様に対策が取りづらいのが、水道料金の値上げだ。
「全国の事業体では、老朽化している水道管のメンテナンスが急務となっています。また少子化や節水機器などで水需要が下がっているため、経営的に厳しい状態が続いており、料金の引き上げを行っているのです」(柏木さん)
たとえば神奈川県では、今年10月から平均16%、2025年10月から平均19%、2026年10月から平均22%と、段階的に料金水準を引き上げていくと発表されている。電気やガスと違って事業者を乗り換えたりすることはできず、値上げを受け入れるほかないのだ。
また、10月1日には、さまざまな値上げも予定されている。
「郵便料金が、はがきが63円のところ85円に、そのほか速達やレターパックなども軒並み値上がります。手紙を出す人が激減しているうえ、2024年問題で配達員の残業が抑制され、深刻な人手不足になっていることなどが背景にあります」(柏木さん)
さらに住宅の火災保険の保険料の値上げも予定されている。
「近年、ゲリラ豪雨や台風などの水害で保険金の支払いが増加していること、修繕の際の資材の高騰などがあるためです」(柏木さん)
損害保険料率算出機構では、火災保険(住宅総合保険)は全国平均で13%ほど引き上がると予想。
さらに、“薬”の値上げも。特別な理由がなく、先発薬を購入すると、先発薬と後発薬(ジェネリック医薬品)の差額の4分の1を負担しなければならない。
郵便は日本郵政の実質的な独占事業であり、代替手段はない。値上がりするからといって火災保険を解約したり、長年飲んでいた薬の種類を変えたりするのも難しい。まさに泥沼のような値上げなのだ。