■パレスチナ観光の未来が見えた矢先に紛争が始まった
遺跡だけがパレスチナ観光の魅力ではないという。
「エルサレムからジェリコまで車で1時間くらいです。1週間もあれば、イスラエル側、パレスチナ側のすべてが回れるコンパクトな観光地です。北部に行けば、冬に雪が積もる山岳地帯もある。一方で、海もあれば、砂漠も体験ができます」
おいしい料理も魅力のひとつ。ケバブやフムスなど、日本でもなじみの深い料理のほか、降旗さんがぜひ味わってほしいというのが、マクルーベという料理だ。
「パレスチナも、ヨルダンも、レバノンも、うちがオリジナルだと主張している料理なんですが(笑)、土鍋にお米と肉を敷いて、炊き込んでひっくり返して盛りつけた料理です。やはり、見ごたえもあるし、観光客も大喜びです。
旅行の費用としては、東ヨーロッパに行くくらいのイメージと思っていただければ。じつは昨年3月から、日本からの直行便ができて、16~17時間かかっていたのが、11~12時間で行けるようになっています」
かくも魅力的な観光地としてのパレスチナ。新型コロナウイルスの世界的な流行で観光業は大きな打撃を受けたが、2022年ごろから回復の兆しが見えてきた。
2023年2月には、日本でもパレスチナ観光の魅力を紹介する大規模なイベントを実施。パレスチナ観光遺跡庁の長官も出席し、VR(仮想現実)でヒシャム宮殿のモザイク画を再現する試みも行われた。
まさにパレスチナ観光の未来はこれからだった――。しかし、そんな矢先に起こったのが、昨年10月のイスラム組織ハマースによるイスラエル攻撃と、その報復として行われたイスラエルによるガザへの侵攻だ。後編ではこれらガザ情勢を受けたパレスチナ観光の現状について聞いた。
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