■紛争が起きているのはパレスチナの一部
ガザ地区ではイスラエルの侵攻によって人道危機に陥っている一方、降旗さんがいるヨルダン川西岸はガザの置かれている状況とは異なるという。
「ヨルダン川西岸のパレスチナでは、多くの人が報道で目にするガザのように空爆等の戦闘行為が常時発生している状況にはありません。メディアの報道によって、ガザ地区とヨルダン川西岸を一緒くたにされてしまい『西岸地区を含めたパレスチナの全域がガザ地区のような状況だ』といったイメージを持っている人がほとんどでしょう。
ヨルダン川西岸も、今回のガザ情勢の影響を受け、特に一部の地域については、イスラエル軍の取り締まりの強化やチェックポイントの閉鎖による人やモノの移動の制限が発生しています。しかし、パレスチナの主要な観光地であるベツレヘムやジェリコについては、そこまで急激な治安の悪化は見られず、生活しているパレスチナの人たちも“私たちは普通に生活しているのに、なぜ?”とフラストレーションが溜まっているのが実状です」
現在、日本の外務省は、ガザ情勢を受け、イスラエル・レバノン国境地帯である北部地区を「退避勧告」にあたるレベル4、ヨルダン川西岸地区を「渡航中止勧告」にあたるレベル3に引き上げたが、ヨルダン川西岸地区のラマッラ、ジェリコ、ベツレヘムについては「不要不急の渡航中止」にあたるレベル2としている。
「日本人観光客はコロナ前で2万6千人、2022年で6千人ほどでしたが、今はほとんどいない状態です。今もイスラエルに来ている方は若干名いますが、おそらく知り合いを訪ねにきたり、仕事で来られている方がほとんどだと思われます。
他国からの観光客も大きく減っており、今イスラエルに入ってくる外国人の大多数はアメリカ人の方ですが、彼らはパレスチナ側に旅行するのではなく、イスラエル側にとどまっていることが多い。おそらくですが、ユダヤ系アメリカ人が、親族と会うために来ているのでしょう」
エルサレムでは、以前と変わらず異なる宗教の人たちが平和に共存している地域もある一方で、観光客が激減してしまっているのだ。