閣僚、党役員には防衛大臣経験者4人の顔ぶれが並ぶ(写真:共同通信) 画像を見る

10月1日の就任会見で、石破茂首相(67)は「“日本を守る”――。わが国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しい。平和を守るための抑止力の強化、防衛力の抜本強化に取り組んでまいります」と、強い意欲を示していた。

 

いっぽう、SNS上では、自民党総裁選の結果が出た直後から、今後の“増税”を懸念する書き込みが相次いだ。総裁選で石破氏が「法人税は引き上げる余地がある」と語り、さらに消費税に関して、9人の候補者の中で唯一「(自身の首相在任中は)上げない」と明言しなかったことなどがその背景にある。

 

「石破首相は、在日米軍の特別な地位を認める日米地位協定の見直しや、アジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設を掲げていますが、そういう提案をすればするほど、米国からは『だったらもっと防衛費を増やせ』と、さらに圧力をかけられるでしょう」

 

そう懸念するのは、元経済産業省の官僚で、政治経済評論家の古賀茂明さんだ。石破首相の日米地位協定の見直し発言に、米国はすぐさま反応。共和党のドナルド・トランプ氏が大統領選で再選した場合、要職への起用が取り沙汰されている、元米国防次官補代理のエルブリッジ・コルビー氏が、自身のXで、日米同盟を対等にするためには、日本は防衛費を「GDP比3%程度に引き上げる必要がある」と投稿。見直し論をけん制したのだ。

 

’24年度の防衛費は8兆9千億円。すでに岸田政権下で、’23~’27年度の5年間で総額約43兆円とすることが決まっている。’27年度は11兆円以上になると見込まれ、これはGDP比2%に相当する額だ。

 

「ただし、この円安で米国から購入する兵器も短期間で“値上げ”となっており、とても2%では足りないのが実情。また、トランプ氏が再び大統領になった場合は、もっと武器を買えと迫られるでしょう」(古賀さん、以下同)

 

米国海軍や米中央情報局(CIA)は、’27年までに中国が台湾を侵攻する準備が完了し“台湾有事”が起きる可能性を煽っている。

 

「日本政府も台湾有事を想定しながら、対中国の脅威を煽り、国民の危機感を高めて防衛費拡大を正当化していく可能性があります。そうなった場合、GDP比2%が3%、さらに5%……と、際限なく上がっていくかもしれません」

 

最新の日本のGDPは年換算で600兆円を上回る。その3%で18兆円、さらに引き上げとなれば、今年度の防衛予算よりも10兆円規模の上積みとなることに……。自民党総裁選の2カ月前の今年7月、石破茂首相は、5年間の防衛費を約43兆円と定めた政府方針に対し、さらなる増額を再検討すべきだと地元・鳥取県内で発言している。

 

「仮に、防衛費がGDP比3%になれば、たばこ税や酒税のほか、社会保険料のさらなる負担も選択肢として挙がるでしょう。ですが、いずれも巨額の費用を賄えるほどの規模にはならない。そうなると、社会保障費、教育費など削れる予算を防衛費に回す。そして財源確保のために、消費税増税を行う可能性も十分に考えられます」

 

新内閣人事では、外務大臣に岩屋毅氏、防衛大臣に中谷元氏が就任。そして自民党の政策を取りまとめる政調会長には小野寺五典氏を起用。石破首相を含め、いずれも元防衛大臣で、いわゆる“国防族”ばかりだ。外交・安全保障政策にどれだけ本腰を入れているかがわかる人事だといえよう。

 

「石破政権は、選挙を意識して当面の間は増税するとは絶対に言わないでしょう。来年夏の参院選後に、防衛費増税の議論が一気に加速すると考えられます」

 

“軍事費”のために家計を苦しめる増税を強行するようなことがあれば、国民の「納得と共感」どころか、大バッシングを受けることは間違いない――。

 

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