■「いつか自分が作った衛星を、昴と陽の2人の息子といっしょに見るのが夢です」
子育てと仕事を両立させている笠間さんの朝は早い。
「朝の5時30分には起きて、子供に朝食を食べさせ、夕食を冷蔵庫に用意してから出社します。通勤時間は1時間ほどですね」
機密ばかりの宇宙事業を担う鎌倉製作所のセキュリティは厳重で、本誌が取材した際も、撮影用カメラやICレコーダーの品名とシリアルナンバーも事前に提出が必要だった。
笠間さんは、そんな製作所内の設計棟や試験棟を歩き回り、終業は夜9時ごろ。
「帰宅は10時くらいで、それから次男の勉強を見たり、少し残務をしたりするので、ほとんど自分の時間はないですね」
多忙な毎日だが、最近の息子たちは、仕事の愚痴も聞いてくれる頼りになる存在に。
「夫に愚痴をこぼすと、助言してくれるのですが、私が『そういうことは求めていない』と言ってしまったりして衝突することもあります。
でも息子たちは『○○が言うことを理解してくれない。君たちのほうが優秀だ』とこぼすと、『ママも大変だね』って共感してくれるんですね。次の日には『○○さん、どうだった』と心配までしてくれたり(笑)。
職場と家庭、2つの世界を持つことで、頭の切り替えができて心の安定につなげることができたんだと思います」
癒してくれる息子たちには、自分の働く姿を通して、ものづくりの素晴らしさを伝えたい。
「特に明け方や夕方など、太陽に照らされた人工衛星を肉眼で見ることができます。山あり谷ありだけど、全力で一つのことをやり切った達成感、そしてものづくりの楽しさを、子供たちにも知ってほしい。いつか自分が作った衛星を、昴と陽の2人の息子といっしょに見るのが夢です」
太陽の光を受け、昴のような輝きを放つ、ママの人工衛星を――。
(取材・文:小野建史)
