■2046年までに値上げが必要な事業体は全国の96%に及ぶ
「じつは、今回、水道代値上げを発表した本庄市や戸田市などは、将来的な市の経営見通しに責任を持って値上げに踏み切った優秀な自治体ともいえます」(前出・加谷さん、以下同)
EY JapanEYおよび、水の安全保障戦略機構事務局が共同研究して2024年4月に発表したレポート「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?」では、2043年段階で都道府県や市町などの水道事業体が、赤字経営とならないための必要な値上げ率が推計されている。
同報告によれば2046年度までに値上げが必要とされる事業体は1千199で、全国の96%におよぶ。
そのなかで本庄市は1千120位、戸田市は1千151位と、値上げの必要度が極めて低いのだ。
一方、値上げ必要率が高かったのは宮城県女川町で、福島県鏡石町、長野県木曽町……と続く。
「6位の津軽広域水道企業団(青森県)までが値上げ必要率300%を超えています。『いますぐ3倍に値上げしないと将来、赤字経営になる』可能性を示す数値です」
ちなみに現在値上げの予定はない東京都は、値上げ必要度850位、値上げ必要率26%を示している。
「東京都は現在でも人口が増加していて財政も豊かです。しかし全国の多くの自治体が『50年に1度は取り換えが必要』とされる水道管の設備更新費を水道料金に上乗せせず、先送りしてきた。そのツケがいま、回ってきているんです」
このように全国的に値上げ傾向の水道事業に対し、政府は“最悪の想定”の準備を始めたようだ。
「今後、全国的に巨大地震が発生する確率は極めて高いでしょう。しかし大災害で被害を受けた上下水道を、元通りに復旧する支援をすべて賄えば、国の財政は破綻してしまいます。
そのため国は従来型上下水道システムに替えて、上下水道分散化の検討を真剣に始めているんです」
国土交通省は2024年12月24日、「上下水道一体革新的技術実証事業」をテーマに「公募」を開始。
同要項では、都市部などの大規模な水供給システムの対極をなす「中山間地域等で用いられる小規模な水供給システム」の確立を目指すとしているが、全国紙記者が本当の“国の狙い”を指摘する。
「国交省は、ぼかしますが、はやい話が『上下水道システムをやめて、飲料水は給水車で配り、下水は汲み取り式に戻す』ということ。
『震災で配管が壊れたら、元に戻せません』とは国は言えないため、『持続可能な分散型上下水道インフラ』などと、もっともらしく言っているんです」
汲み取り式という未曽有の景色を、私たちは「近い将来」目の当たりにするというのだろうか――。
