■基礎控除はもっと上げられるべき
数々の年収の壁が消えては生まれ、複雑になり、自分の働き方が手取りにどれほど影響するのか、容易に計算できないのが現状だ。
そこで、ファイナンシャルプランナーの内山貴博さんに、夫の収入、パート妻の年収別にどのくらいの所得税、社会保険料が発生し、また今回の税制改正によってどれほどの減税効果があるのかを試算してもらった。
「妻の年収160万円、夫の年収600万円のケースを見てみます。妻の場合、税制改正前は所得税2万8500円が発生していましたが、改正後はゼロになります。夫の場合、改正後は基礎控除が20万円増え、手取りが2万円増えました。妻の収入に合わせた配偶者特別控除を考慮すると、夫婦で5万5500円、税負担が減るという結果でした」
夫の年収にかかわらず、妻の年収160万円が減税効果のピークとなっている傾向がみえる。
「たとえば夫の年収800万円の場合、年収130万円の妻は4万3500円の減税ですが、年収160万円の妻は7万2500円の減税になります。しかし、年収200万円に増えると、減税額は5万3500円に下がってしまいます」(内山さん、以下同)
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、2025年2月の全国のパート労働者の平均時給は1385円。週4日6時間のペースで働くと年収が160万円ほどになる計算だ。一方、社会保険料が発生する年収106万円を見てみると。
「改正前は所得税が1500円ありましたが、改正後はゼロになります。ただし今回の改正は所得税に関してのみなので、(要件を満たした勤め先で働いた場合)社会保険料の負担は改正前後も16万3千704円のまま。改正後でも手元に残るのは89万6千296円です」
しかし、1万円少ない年収105万円となると社会保険料が発生しないので、改正後は105万円がそのまま手元に残る。だが、社会保険料を払いながら働くと、将来の厚生年金の受給額が増える。年収106万円の場合、5年加入すれば年間約2万9千円の年金を増やすことができるのだ。
「しかし、手取りが減るため、物価高の状況では生活が苦しいと感じる人が多いのではないでしょうか」
減税となった今回の制度改正だが、ややインパクトに欠ける結果だというのは、前出の柏木さんだ。
「当初、国民民主党が打ち立てた178万円の壁が実行されれば、改正前に比べ年収500万円で13万2千円も減税されると試算されていました。その期待が大きかった分、がっかりした人もいるはずです。
また、今回は年収200万円以下の人の基礎控除が95万円に見直されましたが、そもそも基礎控除は最低限の生活を送るためのもので、海外ではもっと手厚い。イギリスでは237万円、アメリカでは209万円と、日本の倍以上もあるのです。もっと踏み込んで基礎控除を上げてほしかったというのが、個人的な感想です。今後も見直しをして、手取りが増える仕組みに改正されることに期待しています」(柏木さん)
石破政権の本気度は、まだまだ足りないのだ。
画像ページ >【比較表あり】2025年4月からこう変わった!パートの働き方別試算表(他2枚)
