手取り年13万増のケースも…「週20時間の壁」パートの手取りと年金はどう変わる?徹底試算
画像を見る 新しい法制度に対応した働き方を考えよう(写真:ocsa/PIXTA)

 

■新たに「週20時間の壁」が誕生する

 

そこで106万円の壁(月収8万8000円、週20時間勤務)から換算した時給1100円、厚生労働省の毎月勤労統計調査が算出したパートタイム労働者の平均時給1375円(2025年3月)の、2つのパターンをもとに、週20時間の壁を検証してみよう。

 

まず、時給1100円の場合。週19時間に抑えて働くと、所得税も社会保険料も発生しないため、年収、手取りはともに100万3200円となる(1カ月4週で計算、以下同)。

 

「しかし週の勤務時間をわずか1時間(年間では48時間)増やすと、額面の収入自体は増えますが、厚生年金保険料を年9万6624円、健康保険を年6万720円、負担することに。結果、1カ月の手取りは8712円、年間10万4544円も減ることになります」

 

その分、将来受け取る厚生年金は上乗せされる。

 

「週20時間のペースで5年働けば、年金受給期間を20年とする場合だと、57万8794円ほど受け取る年金が増えます。手取りと年金増額分の合計を週19時間勤務と比較すると、週20時間のほうが5万6074円ほど得する結果となります」

 

同様に時給1375円で比較すると、

 

「勤務時間を1時間減らした週19時間勤務のほうが、週20時間勤務よりも手取りは月1万890円、年間13万680円も高くなります。ただし、厚生年金が増額されるので、5年勤務して20年間年金受給した場合、手取りと年金上乗せ分の合計は、週20時間のほうが7万92円多くなります」

 

■自由に使えるお金を選ぶ選択も

 

社会保険に加入すると年金以外のメリットもある。

 

「厚生年金に加入することで、体に障害を負った場合、障害基礎年金よりも手厚い、障害厚生年金を受給することができます。また、死亡した場合には配偶者などに遺族厚生年金を遺せます。さらに健康保険に加入することで、病気やケガで3日連続で休んだ場合、4日目から通算1年6カ月間、給与の3分の2が支給される傷病手当金が受け取れます。このような手厚い保険があるので、民間の保険を整理して、支出を減らすことも検討できます」

 

とはいえ、社会保険に加入して20年間の年金生活で得するのは数万円に過ぎないので、物価高で生活が厳しい人は、週19時間に減らして、目の前の手取りを増やすことも選択肢の一つ。さらに、手取りが増えたぶんを趣味にあてたり、投資にあてたりすることもできる。

 

「1週間に1時間減らすと、4週で4時間、年間48時間も自由な時間ができ、有意義に過ごすこともできます」

 

手取り優先で労働時間を減らすのか、将来の厚生年金や、傷病手当などの安心感を得たいがために労働時間を増やすのか……。106万円の壁の撤廃を見込んで、“賢い働き方”を準備しておく必要があるのだ。

 

画像ページ >【比較解説あり】“106万円の壁”撤廃で手取りが減る!(他2枚)

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