■再来院を言われていた80代の患者が連絡つかず
そんな明るい兆しに冷や水を浴びせたのが、今回の打ち切りだ。
「医療費を気にして受診を控える人も出てくるでしょう。この仮設住宅にも、引きこもりがちになっている独居の方も少なくありません。経済的にも精神的にも厳しい状況に置かれている人ほど、声を上げられないのです」(砂山さん)
石川県によると、今年5月末までに仮設住宅で孤独死した被災者は、10人。今後、増加が懸念される。
実際に、「受診控えは始まっている」と話すのは、輪島診療所の事務長・上浜幸子さん。
「医師から『8月末に再受診するように』と言われていた50代の患者さんがまだ来院されていないんです。電話もつながらない。もしかして、医療費の負担が影響しているんじゃないか、と心配で」
長引く避難生活に、体調を崩す人も増えている。
「私の知り合いだけでも、震災以降4人が心筋梗塞になりました。みなさん60代。それに、近所の仮設住宅では、毎日のように救急車のサイレンを聞きます」(上浜さん)
輪島診療所では、最悪の事態を避けるため、困窮している患者には積極的に「無料低額診療」を勧めている。
「ただし、医療費は無料になるものの、薬代までは無料になりません。本来であれば数カ月分まとめて処方する薬を、1カ月ごとに分けて処方してほしいと希望する患者もいます」(上浜さん)
被災者に追い打ちをかける医療費免除の打ち切り。なにか施策はないのか。
「今回、打ち切りを決めた自治体もまた被災者であり、一方的に責めることはできません。しかし東日本大震災の際には、宮城県でいったん打ち切られていた医療費免除が、住民の強い要望を受けて再開された事例があります。
能登半島地震においても、まだ支援を打ち切ってよい状況にありません。免除が再開できるよう国・県からの財政支援が必要です」(前出・長浦さん)
能登の被災者を見捨てることがあってはならない。
画像ページ >【データあり】石川県保険医協会が実施した患者アンケートの結果(他3枚)
