■高市氏が新総裁になれば三党協議が加速するが……
一方、高市氏にも質問を送ったところ、《できるだけ早く効果を発揮する物価高対策をまず優先したい》としたうえで、ガソリンの暫定税率の廃止などとともに《「年収の壁」の引き上げに先行して取り組みたい》と、小泉氏同様、基礎控除の引き上げに意欲を見せた。
さらに、高市氏は「給付付き税額控除」の実施を強く訴えてきた。前出とは別の自民党衆議院議員はこう語る。
「もともと高市氏は、食料品の消費税を0%にする案を発信していました。物価高や景気回復策として、消費税減税が望ましいと考えているのです。しかし、財務省からの猛反発が必至。自民党内の財務省寄りの議員たちにも足を引っ張られるので、今回の総裁選では打ち出すことを断念したのです」
その代替案こそが、給付付き税額控除だという。
「所得税を控除(減税)し、課税額より控除額が大きい場合は現金を給付する。つまり、低所得者には給付、中所得者には税額控除を行う仕組みです」(前出・衆議院議員)
前述の基礎控除と違って、税額控除は直接税金から一定額が引かれる仕組みだ。所得税額が0円となった場合、余った控除額と同額が現金で給付されることになる。
現在、自民党・公明党、立憲民主党の3党が「給付付き税額控除」の導入を巡り、協議を行っている。しかし、まだ導入時期や減税の規模については、何も決まっていないのが現状だ。
高市氏は《現段階において具体的な数字をお示しすることはできません》と文書回答を寄せたが、政治記者はこう予想する。
「高市氏が新総裁になったら、協議が加速するでしょう。減税の規模も大きくなることが期待されます。おそらく断念した“食品の消費税0%”と同等の物価対策を考えているのではないでしょうか」
立憲民主党の中堅議員も同様の見方をしている。
「わが党の試算では、食料品の消費税(8%)をゼロにした場合、国民1人当たり年約4万円の負担軽減になります。国全体で年間5兆円の減税ですが、おそらく高市氏は、この5兆円をベースに制度設計を進めると思います」
前述のとおり、基礎控除額を引き上げて、さらに2人世帯で8万円の給付付き税額控除があった場合で試算すると、年収500万円の人は約9万5000円もの手取り増になる。
減税案に関しては、小泉氏よりも高市氏に期待できそうだが、財務省からの反発も予想されるという。
またダークホースとして猛追している林芳正氏も「官僚からは話を聞いてくれる“いい人”で通っています。財務官僚としても扱いやすいのでは」(政治記者)と、減税には期待できそうもない。
有馬さんはこう語る。
「先の参院選では、消費税減税が民意でした。しかし、総裁候補は『解党的出直し』とまで口にしているのに、誰も財務省と戦おうともせず、『消費税減税』を明言しません。代替案に関しても、具体的な数字を言わない。候補者からは覚悟を感じません」
強いリーダーシップを期待したい。
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