■“再利用”の名のもとに市中で“最終処分”を
今後、全国にこの流れが波及していく可能性が高い。本誌が環境省に取材するとこんな回答が。
「中央官庁等で再利用を進めたのち、国民の理解醸成を踏まえて、公共利用での先例を作っていく」
また、公共事業に使われる場合、事前に近隣住民に知らせるのか、という問いに対しては、「それぞれの場所に応じて適切に考えていく」と回答。つまり、あなたの街にある官公庁の関連施設や、市役所などの公共施設で、除染土が知らぬ間に使用される可能性がある。
現在、中間貯蔵施設で保管されている約1千400万立方mのうち、約4分の3が8000ベクレル以下だという。
「環境省の新基準では、そのほとんどが再利用可能となります。本来は最終処分場で保管されるべき除染土のほとんどを“再利用”という名のもと市中で“最終処分”するつもりでは」(大島さん)
問題は、土に含まれる放射性物質だが、再利用を可能にするための“まやかし”があるという。
「環境省は原発事故のあと、特措法に基づく省令で、1キログラムあたり8000ベクレル以下の土は再利用できるという新基準を作りました。しかし一方で、原子炉の設置や運転に関する規制を定めた原子炉等規制法では、安全に再利用できる基準は1キログラムあたり“100ベクレル以下”と定めています。あきらかに矛盾があるのです」(大島さん)
つまり、80倍も基準を緩めたわけだが、環境省は「100ベクレルは制約のない自由な流通を認める基準。8000ベクレルは、法の下で管理しながら再利用する基準。前提が異なるので問題ない」と回答。
これに疑問を呈すのは、原子力市民委員会の委員で環境計画が専門の後藤忍さん(福島大学教授)。
「過去に環境省は、1キログラムあたり8000ベクレルの除染土が、制限なく再利用できる基準の“100ベクレル”以下になるまでには約190年かかる、と試算しています。土木工事等の資材として再利用した場合、190年間も安全に管理・モニタリングできる可能性は低いでしょう」
